』それが名詞です











ジュー






「これって・・・・・」

「僕、ここのお好み焼きが一番好きだから!」






ジュー






「これがさっきちゃんとモコナが言ってたお好み焼きかー」

「そうだよー。焼き方とか結構難しいの」






ジュー






「お好み焼きは阪神共和国の主食だし知らないってことは・・・」






お好み焼きが主食なのかこの国。






「あ、もしかしてあなたは外国から来たんですか?金髪さんだし」

「んー外といえば外かなー。因みにオレだけじゃなくて他の皆もそうだよー」

「え、でも・・・」






チラっと男の子に見られた。






「あ、私は自分の国にもお好み焼きがあったから知ってるだけ」






ジュー






はい、皆さんお気づきでしょうか。お気づきでしょう。今、私たちはお好み焼き屋さんにいます。






「In the OKONOMIYAKI SHOP !」

「わっ」

「あ、ごめん」






いきなり叫んじゃったから隣の小狼を吃驚させちゃった。だってテンション上がってるんだもん。ここ大阪っぽいしお好み焼き絶対美味しいだろうし(だって主食って言ってる程だしね!)、何よりお腹空いてたからご飯食べれるし、小狼の巧断かっこよかったし、目の前の席はまだ慣れぬ美形人ファイ・D・フローライト氏だし・・・これはテンション上がる!

それにしても隣の小狼は私の友達の李小狼にそっくりです奥さん。でも中身はこっちの小狼のがおっとりしてるみたい。私の友人は結構短気?あ、でも初めて会った時に比べると全然今の方が丸くなったか。






「特にあのリーダーの笙悟さんの巧断は特級で、強くて大きくてみんな憧れてて!」






助けた男の子斉藤正義くんはものすっごいキラキラした瞳で"笙悟"さんの事を語る。"笙悟"さんはさっき街中で堂々とバトってたチームの片方のリーダー。
小狼の巧断を見てケンカを吹っかけてきた人。(小狼の巧断には、出てくることは前もって知っててもやっぱり吃驚した)
浅黄笙悟。『FOWOOOO!』とか言って散って行ったチームのリーダー。正直その掛け声はどうなのよ、と心の中で一人つっこみ。


正義くんの話しだと笙悟さんのチームはいいグループなんだとか。戦う時にちょっと建物壊す(あれでちょっと?)から大人の人たちには怒るけど、それ以外の悪いことはしないし凄いカッコイイらしい。






「(でもさ、よく考えてみてよ正義くん)」







それ以外の悪いことはしないって言っても、建物壊れてその下に人がいたらどうなるの?瓦礫の下敷きじゃん。運悪かったらその人死んじゃうじゃん。現に正義くん、小狼が助けなかったら下敷きになってたよ。

『それは自分がどんくさいからだ』って言ってたけど、さっき街中にいた人とか結構必死に逃げてたよ?逃げ遅れたら完璧に戦闘に巻き込まれちゃうような人もいたよ?


そこんとこ考えてないんだから私は浅黄笙悟のチームも好きになれない。






「でも、小狼君にも憧れます」

「え?」

「特級の巧断が憑いてるなんて・・・すごいことだから」

「特級って、それ何なんですか?」

「巧断の『特級』です」






四級が一番下で、三級、二級、一級と上がっていって一番上が特級です、と正義君は説明してくれた。
氷騎はどれなんだろう?確かファイも黒鋼も特級の巧断じゃなかったっけ。(あれ?違ったっけ?)






「じゃああのリーダーの巧断ってすごい強いんだー」

「はい」

「小狼くんもそうです。強い巧断・・・特級の巧断は本当に心が強い人にしか憑かないんです。巧断は自分の心で操るもの。強い巧断を自由自在に操れるのは強い証拠だから・・・・憧れます・・・・・僕のは・・一番下の四級だから」






そう言って俯きながら奥歯を噛み締める正義君。確かに小狼の心は強い。漫画を通してそれは解った。そして黒鋼もファイも。良い意味でも悪い意味でも。
じゃあ私は?私の心は強いのかな。強いか否かで聞かれたら多分答えは後者だろうけど。






「(・・・・でも私は、氷騎が四級の巧断だとしても別に構わない)」






私に仕えるためだけに生まれてきてくれた氷騎。私のためだけに。他の誰でもない私のためだけに生まれてきてくれた。自分のためだけって、やっぱり嬉しいじゃん?だから、私は氷騎が特級でも四級でも傍にいてさえくれれば嬉しいよ。






「四級だからってそんなに落ち込むことないよ」

「・・え?」

「つまり巧断っていうのは心の具現化なんだよね?で、正義君の巧断は一番下の四級だから自分の心は弱い、と。でもさ、私思うだけど、身体の成長と同じで心の成長も個人差があると思うんだよね」






生まれた時、人は皆一緒。そこからどんな経験をして、どんな境遇で今まで生きてきたかによって心の強さも脆さも違う。






「巧断の等級が上がるかは解らないけど、これから正義君が色んな事を経験して強くなってけば三級、二級と上がってくかもよ?小狼も浅黄笙悟も正義君より心の成長が早かっただけ。正義君だって強くなれることができるよ。強くなりたいと思ってればね。」

「それにさ、よく考えてみてよ!自分に憑いてる巧断だよ?自分だけにだよ?何か嬉しくない?自分の一生を捧げてくれる・・・っていうのは何か変だけど・・・でも、ずっと一緒にいてくれるんだよ。その人が生きてる間はその人のためだけに。等級とか気にしてたら一緒にいてくれる巧断が可哀想じゃない?一緒にいてくれてるのに、さ・・・」

「だから!等級とか気にしなーい!正義君は正義君のペースで自分の巧断と成長していけば問題ナッシングな訳!それに正義君まだ若いんだしこれからが成長期だよ!」






ビシっと人差し指を立てて正義君の方へウィンク。いや、正直ウィンクってどうなの自分とか思ったけど、いつの間にか場の空気が凄いシリアスになってるような気がしたからこうやっておちゃらけて場を和ませようという私なりの考えですよ。
まあこんなシリアスな雰囲気にしちゃったのは紛れもなく私みたいだけど。






「・・・・・・・あの、ちょ、何か反応してよ皆・・・」






視線が痛い。何でだ。何で皆こっち見てるのに何も一言も言ってくれないわけ。流石に誰にも何も言ってもらえないのは悲しいぞ。ほら、何か隣の小狼とかきょとん、て顔してるし!っていうかウィンクしたことが今更になって恥ずかしいぞ。(そこですか!?っていうツッコミを四月一日なら絶対する。これ確実)






「・・・・何か、ちゃんてさー」

「?」

「言う時は言うって感じだねー」






へにゃん、と笑いながらファイは言った。


・・・・・ん?







「・・・・え?ちょっと待って・・?それっていっつも私がおかしいって言いたいの?」

「お前自覚無かったのか」

「うっさいまっくろくろすけ」

ま・・!?てめぇ・・何だその呼び方!」

「確かに黒さま真っ黒だー」

「黒鋼真っ黒ー!」






ファイとモコナの茶々もあり、黒鋼はうるせー!と怒鳴る。黒鋼の声が一番煩いわ。
で、結局私の質問ははぐらかされました。まあ、いつも私が真面目に振舞っているかと言われたら・・・見えないだろうな、うん。






「(いつも全力投球で生きてはいるけどね!)」

「・・・ありがとうございます」

「え?」






目の前の黒鋼vsファイ・モコナの漫才(傍から見るとそう見える)を見ていると、隣の方から小さくお礼が聞こえてきた。見ると、正義君がどことなく頬を染め、嬉しそうにこっちを向いていた。






「僕、そんなこと今まで言われたこと無かったから・・・嬉しいです!ありがとうございますさん!」

「いえいえ、そんな!っていうか寧ろ、巧断のことも正義君のこともまだあんまり知らないのに大口叩いちゃってごめんねっ」

「いえ!本当に嬉しかったですっ!」






そう言ってお礼を言ってくる正義君の顔は本当に嬉しそうで。その顔を見てるとこっちまで嬉しくなってくる。まさか自分の言葉でここまで喜んでもらえるなんて。






「そう言ってもらえるとこっちも嬉しいよ」






ニコ、と私も正義君に微笑み返した。






「・・・それにしても・・・おれもちょっと意外でした」

「えー、小狼くんまで意外とか言うんですかー。もう何かいじけそうだー」

「あ、いえ、その・・・決して悪い意味じゃなくて・・」

「お前はふざけてるイメージしかねえからな」

「くーろーがーねー?」






ファイとモコナとの漫才を終え、先ほどから興味津々だったお好み焼きを今にもひっくり返そうとしている黒鋼を睨む。ふざけてるって・・・まあこっち来てからまだ真面目なことあんまやってないけどさ!






「待ったー!!!」






びくぅっ!

今の私達のテーブルに擬音をつけるとしたらきっとこれ。
いきなりの横からの大声に皆吃驚した。(ファイは・・・吃驚した、のか・・?)

はっ!ていうかこれはまさかあの場面では・・・!?











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11.02.18