美形さんへの動悸は止まりません
「ふーん、じゃあファイは自分で侑子さんのとこに来たんだー(って知ってるけど)」
りんごを食べながらそれぞれどうやって侑子さんのミセに来たかを話す私たち。漫画で読んだ通り、小狼くんは国の神官さんに、黒鋼は知世姫に、ファイは自分であそこへ来たと言った。
「だったらあの魔女に頼らなくても自分でどうにかんるだろうが」
「無理だよー」
ファイがえへへーと笑いながら否定した。
・・・・・・やばーい。かっこいー。何この美形さーん。へにゃんてした笑い方でも十分かっこいいですー。
私の世界にも美形さんは沢山いました。もう、ね、何かクロウカード探しに首を突っ込んでる間何人の美形さんとお会いしたことか。(あれ?そこまで多くないかな?ま、いいや)
「オレの魔力総動員しても一回他の世界に渡るだけで精一杯だもん。小狼君を送ったひとも、黒ちんを送ったひとも物凄い魔力の持ち主だよ」
ってファイの言葉の次に黒鋼がキレた。黒ちんって呼び方が気に食わないみたいです。えー別によくない?黒ちん。可愛いじゃん。っていうか面白いじゃん。確かこの後、ファイはずっと黒鋼のことあだ名で呼び続けるんだよね。だったら私も何か面白い黒鋼のあだ名考えようかなー。
「(いやー、でも『お父さん』以上に面白いあだ名なんて・・・)」
漫画の中でファイが黒鋼を『お父さん』と読んでいるところには思わず『その通り!ぴったりだ!』とか思ったもんなー。ファイがお母さんで黒鋼がお父さんとかナイスポジションでしょ。
「ちゃんはあの魔女さんのお店にいたけど、あの人とどうゆう関係なのー?」
「・・・・『黒ぽん』とか『黒ぴっぴー』とか『黒たん』とか全部もう使われちゃうしなー・・」(ぶつぶつ
「・・・・ちゃーん、聞いてるー?」
「・・・いっそ"クロ"繋がりで全然違うものにしてみるとか?『まっくろくろすけ』とか『クロコダイル』とか?」(ぶつぶつ
「・・・おーい、ちゃーん」
「ってそれじゃああだ名じゃないし。本当の名前より長くなってるし」(ぶつぶつ
「ちゃんてばー」
ヒョイ、と横からファイに覗き込まれた。
「っつぁああい!?」
「わー!奇声!」
いやモコナさん、何が『わー!』なの?確かに奇声だったかもしれないけど。何でそんな楽しそうに言うんだ。(ただたんに私の奇声が面白かっただけか?)
とりあえず私は奇声とともに数メートルファイから離れた。ら、私の隣にいた黒鋼にぶつかった。
だって吃驚するじゃん!?あんな美顔が考え事してる最中にいきなり横からきたら。そりゃ奇声くらい出るって。
「ごめんねー、驚かせちゃった?」
「今のはこいつが驚きすぎなだけだろ。っていうか何に驚いたんだよ」
「え?何にって・・ファイの美顔に決まってるじゃん。ちょっと想像してみ?考え事してる時にいきなり超美形に顔覗かれるんだよ?吃驚しないわけあるか!」
「何で最後逆ギレしてんだてめえは!」
「あははー、昨日も言ったけどお世辞言っても何も出ないよー」
だからお世辞じゃないんだって。ほらもう、私たちのやり取り見て小狼がどうしよう・・・って顔してるじゃん。あれ?で、結局何でファイは私に話しかけたんだろ?
「きゃあああああ!」
「!?」
え、なになになになに!?
いきなり悲鳴聞こえただけど何なの!?
殺人でも起こった!?
「今度こそお前らぶっ潰してこの界隈は俺達がもらう!」
っていう声がした方を向くと、今にもケンカをおっぱじめそうな若者たちが地面とビルの上に。
「(これあれか!小狼たちが初めて巧断バトル見る場面か!)」
そうこうしている間に戦闘は開始され・・・
「(うわわわわわ!巧断ってめっちゃモンスター!!!!)」
両チームの人たちが自分の巧断を出して相手に攻撃を始めた。
漫画では小狼たちの巧断にしか目いってなかったから、この光景には吃驚だ。
「(デジモンだデジモン・・・げっ、あの巧断、目玉一つでぎょろってしてて黒くて両翼って完璧に悪のモンスター雑魚Aだよ!)」
きっと四月一日がいたら今物凄いいいツッコミを入れてくれたに違いない。
目の前では激しい巧断の攻撃が続いている。街のものをことごとく破損させているから大人のギャラリーは激怒。
っていうか普通に危ないでしょ。瓦礫とか一般市民に当たったらどうすんだー!
って思ってる傍から転んだ男の子の上に崩れた看板が落ちそうになっていた。というよりもう落ちてきている。
「あっ!」
「危ない!!!」
私が飛び出すより早く小狼が駆け出した。
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11.02.18