パーティー結成
「・・ん・・・」
「あー、気がついたみたいだねー」
・・・・・・・・・・覗き込まれている。誰にかって?いやいやいや、これは紛れもなくですね、
「・・$☆жШЮ♪£!?」
「あはははー、面白いねー、君」
ズザザザザ、と少し上半身を上げた状態で勢いよく後ろの壁にあたるまで後退した。ゴンッ、と思いっきり頭をぶつけたけど、気にならない。
そう、私のことを結構近くで覗き込んでいたのは"あの"金髪美形のファイ=D=フローライト氏でした。
私の心臓が持たないです!寝覚めに貴方の顔はホント心臓持たないんですよ。紙面で見るより本物の方が何倍もかっこいいんです。
「ちょ、ホントそのかっこいい顔近づけないでください」
「うーんと・・・それってもしかしてオレ褒められてるー?」
「勿論。って!何で近づいてくるんですか!!」
「えー、だって君の反応面白いしー」
面白いですと!?こっちは赤くなっているであろう顔を隠すのに必死なんですよ。まじで。
「わーい、だー!」
「モ、モコナ!(天の助け!)」
私はぴょーん、と膝に乗ってきたモコナを前に突き出し、これ以上金髪美形の彼がこっちに来れないようにする。突き出されたモコナは、ファイのお顔が近ーい、と喜んでいる(かどうかちょっと解らないけどそう見える)。私の後ろは壁なんだぞ。もう下がれないんだから近づかないでええええ。
「ちょ、ホント慣れるまで数分かかると思うんでそれまで待ってください。切実に。そして自分はカッコイイんだって自覚してください」
「そんなに褒めてもオレ何にも持ってないよー。それに君・・・えーっと・・ちゃん、であってるかな?」
「はい」
「ちゃんも十分可愛いよ」
・・・・・・・・・。
わーい、何か幻聴聞こえてきちゃったよー。ちょっと不思議な夢見たから耳もテンションも頭をおかしくなったか、自分。
「・・・・煩せえ・・」
あまり大きな声ではないけど、部屋全体に届くような不機嫌そうな声が斜め前から聞こえた。見ると、武士のような格好をした、これまた紙面の上で見覚えのあるこの旅の主要メンバー。
「・・・ごめんなさーい」
てへー。怒られちゃった★
・・・・じゃあない!
うーん・・・一人でノリツッコミってやっぱり空しいなー。四月一日のツッコミが懐かしい。
「ー!久しぶりだねー!」
私の手から抜け出し、ぴょん、と膝の上に乗ってきたモコナ。
久しぶり?私は今までどこかでモコナに会ったことあるっけ。記憶を辿っても思い当たる節は無い。となると"無くした方の記憶"の方にモコナとの初対面のときの場面はあるのか。
「うーんと・・・・ごめんね、何か私記憶喪失っぽくて・・モコナと会ったこと覚えてないんだ」
「・・大丈夫!の記憶のカケラもサクラの記憶のカケラもモコナ、見つけるの手伝う!」
・・・・話し進むの早いな。ほら、ちょっとついていけてない人たちが若干二名程いるじゃん。っていうかファイ以外解ってなさそうだって。逆に何でこの人はこんなには解ってそうな顔してるんだ。
「もう一枚目は見つかったんだよ!」
「・・・・・・・・・はい?」
見つかった?これまた早くないですか。まだ旅は始まったばっかりっていうか、スタート地点に立ったくらいじゃないですかね。
「サクラの羽との羽、一枚ずつ小狼の服に引っかかってたの!」
ああ、あの場面か。ファイが小狼くんの服ゴソゴソして、羽あったー、みたいな感じになるあそこか。実際はあれ、ファイが旅に出る前から持ってたんだよね。私の羽も一緒に見つかったって事は、ファイは私のも初めから持ってたってこと?
「え、それでその羽は今どこに・・・」
「君に近づけたら、吸い込まれるように消えちゃったよー」
なるほど。だからあの夢、か。あれは私の記憶だったのか。記憶が戻れば魔力の使い方も解るって本当だったんだ。先ずは回復の魔術ゲットだね。
「えーっと、お騒がせしました。改めまして、といいます」
「こっちは名前長いし、ファイでいいよー。で、こっちがー・・・」
「小狼です」
「で、今は眠っちゃってるけどこの子がサクラちゃん。でー、こっちが黒りん」
「黒鋼だ!」
ナイスツッコミ!
漫画でも思ったけど、黒鋼は天然のツッコミキャラなのかな。周りがボケボケ過ぎっていうのもあるかもだけど。小狼くんとさくらちゃんとか超がつくほど天然みたいだし。
「・・・あのっ、・・貴女もさくらと同じように記憶が・・・?」
少し疑問に思うことがある、とでも言いたげに小狼くんは私を見る。そりゃそうだ。"同じように"記憶がないのだったら、こうもピンピンしていないはずだから。
「・・・私の場合は、昔の記憶が無いみたいなの。簡単に言っちゃえば前世の記憶的な?」
かなりアバウトな説明になってしまったが、今の身体で生活していた時の記憶というと私から言わせれば前世の記憶だ。前の身体で過ごしてきた記憶は、ちゃんと小さい頃からあるのだ。私自身記憶を無くしたとは思っていない。
「侑子が、の記憶の羽は必ずの中に還らなきゃいけないって言ってた」
「え?それは初耳。何で?」
「わからない。・・・は記憶いらない?」
「え・・・」
『いる』か『いらない』か、と聞かれれば答えは『いらない』。昔の記憶が無ければ生きていけないとかいうのであれば話は別だけれど、私の場合は魔力の使い方が解るだけ。まあ、その他色々解りそうだけど。でもやっぱり強く願うほどではない。私には生まれた時からの記憶はあるから。この身体ではなく、前の身体で生活した日々の記憶が。だから別に違和感は全く感じない。
「侑子、は絶対に『いらない』って言うだろうって・・・」
「(お見通しですか)」
「でもねっ、やっぱりモコナはにモコナのこと思い出してほしいよ・・」
「・・モコナ・・・」
しょんぼり耳を落としてしまったモコナ。そうだよね。自分が知ってる相手に『アナタのことは知りません。覚えてません』なんて言われて悲しくない人はいないよね。何も考えずに私はさっきモコナに覚えてないって言っちゃったけど、傷つけたよね。
「・・・ごめん、モコナ。侑子さんの言った通り、私、今この瞬間までいらないって思ってた。でも、そうだよね。誰かのことを忘れちゃってたら、その"誰か"が悲しい思いするんだよね。記憶、探さなきゃね」
記憶が無くて傷つくのは私じゃない。私と関わってきた人たちだ。自分が傷つくのはいいとしても、自分が誰かを傷つけるのはとても辛くてやるせない気持ちになる。だから、いらなくなんてない。
「・・・ファイ、黒鋼、小狼くん、モコナ。サクラちゃんのついででいいです。どうか私の記憶の羽を探すのを手伝ってください」
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10.03.04