魔法使いの証
『わーん、わーん』
見覚えのあるミセの庭。そして、小さな女の子。金髪にワインレッドの目。その目からは今は大粒の涙が毀れている。あれは、私?
これは、私の記憶・・だったりしますか?
『・・・?』
『・・っく・・・うっ・・・とうさまー・・・いたい・・』
『全く、また転んだのか』
『・・だっでー・・・うっ・・わーん』
ミセの中から出てきた人。何でだろう。角度的には絶対に見えるはずなのに、姿があんまり見えない。長身で、男の人のシルエット。その人は泣いている小さい私の元に歩いていき、右肘を確認するように慎重に見た。
『、これくらいならもう自分で治せる』
『・・ホント?』
『ああ。傷口に手を翳(かざ)して、治れ治れ、って念じて』
『・・・うんっ』
小さい私は、その人に言われるままに、掌を右肘の傷口に翳して念じ始めた。治れ、治れ、・・って口に出てるけどいいのか、幼き頃の私よ。
って思っているうちに小さい私の翳した方の手から淡い金色の光が出て、みるみるうちに傷は消えていった。
・・・・・・まじですか。
『ホントだ!消えたよとうさま!!』
『よかったな』
『うん!これでいくらケガしてもだいじょうぶ!』
今までどのくらい怪我してたんだよ、自分。まあなんか、凄く嬉しそうだからあんまりツッコム気にはなれないけど。
・・・・回復の魔法、か。
BACK-NXET
10.03.02