これもまた必然だったこと。
「・・・ここ、は・・・」
ミセの縁側?目の前には桜の木、そして空には満月。
ああ、ここは夢なのかな。根拠はないけどそう思うのは、この世界に慣れたからか、それとも私の中にある魔力が自然とそう思わせているのか。
侑子さんから聞いた。"夢"は渡ることができるのだと。夢を渡るってどんなことかと思ったけど、要するに人と同じ夢を見ることができる、または人の夢に入り込めるor自分の夢に他人が入ってくる、みたいなものだと自分的に解釈。
縁側に腰を下ろすと、新たな人影が現れた。
「、さん?」
「あ、四月一日だー。やほー」
びっくりしたようにきょろきょろと辺りを見渡す四月一日。まだ、夢の中の存在を知らないんだ。
「ここは・・・侑子さんの店?」
「ここは、夢の中・・・多分ね」
「・・ゆ、め・・?」
「そ、夢」
こんなに早く四月一日って夢の中に来れるっけ。やっぱHOLICの内容よく覚えてないや。ま、でも今起こっていることが全てで真実。
こっちこっち、と四月一日を呼び寄せ縁側に座らせた。
「・・・・・・・・前々から気になってたんですけど・・」
「ん?」
「さんは、どうして侑子さんのお店にいるんですか?」
『どうして』、か。
「あ、いや、別にさんが邪魔だとか言ってるわけじゃなくて・・!」
「うん、知ってる。だって四月一日は優しいもん。・・・・魔力の回復を待ってるの」
私も正確な理由は解らない。でも、今は待機期間。でもきっと、この期間は私の今まで封印されていた魔力をもう一度目覚めさせるための期間だと思う。
そういえば、旅が始まるのはいつなのかな。その前に私の魔力はちゃんと目覚めてきてるのか。何も変化は無いような気がするけど。これで目覚めてませんでしたー、でピンチの時に魔術とか使えなかったらシャレにならないんですけど。
・・・・・っていうか、魔術云々の前に、私魔力の使い方知らないんですけど。
「さんには魔力があるんですか?」
「みたいなんだよね。実感はないけど。私、本当は違う世界の人間なの」
「え?」
「前は違う身体で、違う世界で暮らしてた。けど、この世界にいきなり飛ばされて、魔力があるって言われて、この身体が私の本当の姿だって言われて、ホントあの時は頭回らなかった」
目を見開いて私の話を聞いてる四月一日。それがちょっと面白くて、軽く噴出して、それから満月を仰いだ。綺麗で大きな満月。月は元の世界と何ら変わらないでそこに在る。さくらたち、今頃何してるのかなー。
この世界とあっちの世界じゃ時間の流れは一緒?
それすらも私は知らない。
「・・・本当の姿って・・・」
「前の私は髪の色はマシュマロブラウンで、目も普通に茶色っぽい黒。背も今よりは小さかったしスタイルも普通?」
「・・何で最後疑問系なんですか」
「うーん・・私的にはもうちょっと細くてもいいとか思ったけど、周りにそれ言ったら十分細い!とか言われたから間をとって普通」
私の答えを聞いて軽く笑った四月一日。思えば四月一日とこんなにまったり話したのって初めてだ。なのに、どこか懐かしい。なんで?
「(世界違うし前に一度会ってるとかはありえないよねー)」
「・・・何かおれ、この店に来てから順応能力が格段に上がったと思うんです」
「あはははっ、同感!このミセ摩訶不思議現象いっぱいだもん」
「さんの話だって、前のおれなら普通に疑ってますよ」
私だってそうだ。今でこそ受け入れたけど、ここにきた当初は(と言ってもまだ来て一ヶ月も経ってないけど)何もかもが夢じゃないかと思った。これはいつか目が覚めるだろう、と。でも、そうではなかった。いくら待っても目は覚めない。何度四月一日と一緒にアヤカシ事件に巻き込まれたか。それでも、一向に目は覚めてくれない。
だから、これは現実。
「・・・多分、もうすぐだ・・・」
「え?」
「もうすぐ、私がここを離れる時がくる」
なんとなく、そんな気がする。最近、なんとなく、で物事を判断したり予想したりすることが増えた気がする。これは魔力がちゃんと戻りつつあるって考えてもいいのかな。
「・・・どこかに、行くんですか・・?」
「元々私は、ある人たちと旅をするためにここに呼ばれたらしいの・・・・貴方とも関係のある人と、ね」
「・・え?」
それってどういう、と聞いてきた四月一日に、なーんでもない、とはぐらかすように笑った。四月一日は、もう一人の小狼。『ツバサ』は結構謎めいてた漫画だったから細かいところまで覚えてはないけど、それは覚えてる。
「四月一日、君尋くん」
「?、」
「これからも、よろしく」
疑問顔の四月一日に私は笑いかける。
この先も、行く道は長いから、と胸中で付け足して。
やっぱり、彼はどこか懐かしい。
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10.03.01
『店』言う四月一日と『ミセ』と言うヒロイン
加筆「修正:11/02/17