自己防衛と言う名の外界遮断を実行します。
「・・・何をしてるの」
「え?いや、何か今すっごいありえないことを聞いちゃった気がしたから空耳を防ぐために耳を塞いで・・・」
「そうしててもいいけど、やり続けるなら貴女を放置して私は戻りましょうかね」
そう言って踵を返してミセの中に戻ろうとする侑子さん。いやいやいや!今こんな所で一人にされてもどうすればいいのやら・・・!(ここに待機しないといけないってことしか解っちゃいないんだああ!!)
「いやー!侑子さん嘘!嘘です!だから置いてかないでー!」
「近所迷惑」
「あうゎっ」
三 度 目 。
チョップ三度目だよ!痛いよ侑子さん!!
「・・・・・それで、何で私にクロウ=リードと同じくらいの魔力なんかあるんですか。そんなものないですよ。クロウカードの番人であるケロちゃんたちだって私に魔力は無いって言ってたし・・・」
「それはクロウが何も告げない事を対価に魔術をかけたから。魔力を封じる、ね」
「魔術?」
「貴女は覚醒遺伝でクロウの魔力を最も受け継いでいる人物」
覚醒遺伝・・・って、自分の子供や孫すっ飛ばして、遠い子孫とかに自分の力とか特性が遺伝するっていうアレのことですか。
・・・・・遠い子孫、だと?
「貴女は、クロウ=リードの子孫よ」
「・・・・・ジーザス!!」
クロウの、子孫?
桜や小狼みたいに私も血縁者ですか!子孫ですか!!
「飛王の存在は知っているわね?」
「漫画に出てきたんで一応は・・・。クロウ=リードの血縁者で、クロウに次ぐ魔力を持っていて、世の理を壊そうとしている存在ですよね?」
「ええ。その飛王が貴女を狙うのをクロウは阻止しようとしたのよ」
「飛王が私を狙う?」
「クロウと同等の魔力を持っているという事は飛王を凌ぐ魔力を持つという事。飛王は己の望みのため、自分の邪魔になりそうな存在は消そうとするでしょうね。貴女に旅をさせる事を望んだクロウはそれを防ぐために対価を支払ってまで、厳重な魔術をかけた」
「でも、カードを集め終わって、クロウカードが全てさくらカードになった時点で桜の方がクロウより上の魔力を持ったはずじゃ・・・」
「そうよ。だから、エリオルが傍にいる。あの子を守るために」
柊沢エリオル。まだ、桜や小狼がカード集めをしていた頃、いきなりイギリスから帰ってきたとか何とかで現れた男の子。実はクロウ=リードの生まれ変わりで、桜の魔力を上げさせるためにカード集めの邪魔をしてきていた人物。見た目は子供の姿だけど、実はさくらのお父さんと同じ年だったって聞いたときには若作りか、とも思った。
「でも、エリオルが日本に来たのはカード集めの途中からだった。桜を守るためだったら、桜が生まれた時から傍にいるはずじゃ・・・」
「"傍にいる"っていうのは同じ世界にいること。同じ世界にいれば、他世界からの干渉を防げるから」
「それだったら、私も桜と同じように守られてたはずじゃ・・・」
私も桜も魔力を持っていたから狙われる(私に魔力があるなんてやっぱり信じられないけど)。同じ世界にいて桜を守れるなら私のことだって守れたはず。なのに、回りくどく対価を払い魔術をかけた。どうして?
「二人分の魔力を隠すことはできなかったのよ。それも二人の魔力はどちらも強大。それを見越していたから、クロウは貴女に魔術を施した。貴女がこの旅に不可欠な要因だと知った時に、この旅が始まるまでの間、貴女を守るようにと」
「クロウ・・さん・・・」
ということは、私は生まれてから今までずっと彼の魔術に守られていたということ。ふ、とあのエリオルの優しそうな笑顔が浮かんだ。ああ、なんか彼ならやりそうだ。対価を支払ってまでも私を守るという行為を。
「・・・・えーっと・・・で、その私を守るために支払った対価が・・」
「旅に関しての一切を自分から貴女に口外しないこと」
「・・・・でも、知らせなくちゃいけないから、漫画にして私に読ませた。同じビジュアルの人たちが出てきても違和感を感じさせないようにする魔術までかけて・・・」
「そうよ」
『旅には不可欠な要因』、それが私らしい。どの場面に私は必要なんだろう。途中までしか見ていないとはいえ、結構最後の方まで読んだあの漫画。別に私が必要とされるようなところは無かった。あの物語には私は必要ない。
「勘違いしないように」
「え?」
「あの物語はあくまでもクロウが見た未来の事。未来は変わるわ。それが解っていたからクロウは貴女にこの旅を託すことにしたの」
未来は変わる。けどそれは私があの旅に加わらなければ引き起こらないことではないだろうか。クロウ=リードの考え、そして次元の魔女の言っていることがいまいちよく解らない。
「・・・既に、貴女が旅に加わらないと、描かれていた未来とは全く別のものになってしまう状態になってるの」
「・・・は?」
「そのことについてはまだ話せないけど、貴女が旅をする事によっておのずと詳しいことは解ってくる」
何だろう。侑子さんは、何をしても私を旅に出させたがっているように思える。『ツバサ』で、『物語は終わらせなければ』的なこと言っていた辺りから侑子さんはこの旅の原因をつくってしまった人なのかなー、とか思ってたけど、やっぱりそうなのかな?
・・・・何となく、それは聞けない。
「・・・・でも確か、次元を渡るためには対価が必要なんですよね?私に渡せるようなものって・・・」
「・・・・既に、対価は貰っているわ」
な ん だ と ?
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10.03.30
加筆修正:11/02/17