では早速ですが、話せる言葉を教えて下さい。
「できれば日本語でお願いします」
「だから、さっきから言っているでしょう。その現実逃避の仕方は止めなさい」
「だってだってだってだってだってだって!」
「話は最後まで聞くこと」
ズビシッ、とここにきて二度目のチョップをくらいました。くっそー、何で私がこんな目に。
「要するに、私の読んでいた『HOLIC』とか『ツバサ』とかその他のCLANP作品諸々を書いたCLANPという人は実はクロウ=リードで、私に読ませるためだけに『ツバサ』は書かれたと?」
「まあ簡単に言ってしまえばそうよ」
「はーい、先生。CLANPさんは四人で漫画を描いてるって聞きましたー」
「それは本当よ。けれど、その四人もまたクロウの作り出した者達。だから元を辿れば結局はクロウがストーリーや登場人物を彼女達に描かせているだけ」
「・・・・きゃー、すっごくよく出来すぎてるお話でちゃんわけわからなーい」
この場所に来るその瞬間まで私は『ツバサ』っていう漫画を読んでいたんだぞこら。しかも『HOLIC』だって前にちょびっと読んだことあるんだぞ。モコナ触ってみたいなーとか、四月一日の手料理食べてみたいなーとか思ってたんですよ。
あ、『ツバサ』に関してだと、ファイかっこいいなーだとか、この設定よく解らないなーもう一回前の巻読み直さなきゃなーとか、桜と小狼にそっくりだーとか、クロウ=リードって桜が集めてたクロウカードとかいうやつ創った人と同姓同名じゃーんうわー偶然ってこわーい、とか・・・・ん?
「・・・桜にそっくり?同姓同名?何か私ふっつーに読んでたけど真面目に考えたらありえなくないかい?漫画の主人公と現実にいる人物のビジュアルがそっくりだとか・・・それに同姓同名って・・・」
「だから言ったでしょう。あれはクロウが望んで出来たもの。そしてあの物語り全てが、どこか異世界で本当に存在している物語り。だから、貴女が漫画で見た私と同じように、私も生活している。四月一日達もね」
何々?ホントによく解らないんだけど。クロウ=リードが描いた漫画だからサクラ姫や小狼は私の友人、木之本桜と李小狼に似てると。『ツバサ』を手にとって読んだのはさっきが初めてで、大人買いしたのはいいけどまだ途中の巻までしか読めていなくて、その中の登場人物とかめっちゃ自分の友達にそっくりなのに、ふっつーに読んでで、ファイかっこいいーとか思っちゃって(本日二回目)、よし次の巻突入ーとか思った瞬間にこの世界に飛ばされて・・・
「何か余計なもの混じってるわよ」
「えー・・侑子さん心読むの禁止ー」
「全部口に出てたわよ」
「・・・・えへ」
いやー、恥ずかしい恥ずかしい。まさか聞かれていたとは。
・・・じゃなくて!
「仮に百歩譲って貴女が『HOLIC』に出てくる本物の侑子さんで、今の話が本当だとしたら・・・何の目的でクロウ=リードは漫画なんか描いたんですか」
「さっきも言ったでしょ。貴女に読ませるため」
「・・・えー・・・っと?」
その意味が解らないんだってばよ。っていうか未だにクロウ=リードが存在してるとか考えられないんですけど。ってそれ言ったら侑子さんがこうやって目の前に立ってるのもやっぱり夢?とか思っちゃうんですけど!
「『ツバサ』という漫画の中の物語はこれから起こるのよ。貴女が読んだものはクロウが予知した未来の話。貴女にある程度の情報を知らせるためにクロウが描かせたもの。貴女が読めばこの世からあの漫画は消えて無くなるようになっていた。それを描いているCLANPという者達も同様に。そして、漫画の存在も彼女達の存在も誰も覚えてはいない。元から存在していないものとなる」
「・・・人の命を消すってことですか?」
「いいえ。彼女たちは人ではないのよ。クロウが作り出した傀儡のようなもの。貴女やさくらちゃん達に自分が描いていると悟らせないように」
クロウ=リードは私の友達の桜や小狼の血縁者で、この世にはもういない。
けれど、そのクロウの生まれ変わりで、クロウ=リードの記憶を持って生まれてきたエリオルがいる(彼が私たちの前に現れて、自分はクロウ=リードの生まれ変わりだ、なんて言ってきた時には驚いた)。
そのクロウが漫画を描いた(正確には描かせていた?)。しかも私に読ませるために。
・・・・え、クロウ=リードってもう死んでるよね?漫画描かせるとかまるで生きてるみたいなんですが・・・。
「(・・・・・・・・・・もしかして)」
エリオルがやらせてた?彼はクロウ=リードの記憶を持って生まれてきた人物。記憶だけではなく強大な魔力も引き継いでいるらしい。
要するにあれでしょ?生前のクロウ=リードと姿形が違うだけで中身一緒ってことでしょ?クロウ=リードの考えはエリオルにしっかり受け継がれてんでしょ?
だったらエリオルがその魔力で漫画を描かせてたっていうのはあり得るかも。ていうか絶対そう。
「引き寄せられるようにして手が伸びたでしょう」
「確かに今まで興味無かったのに急に『ツバサ』に手が伸びて・・・そういえば『HOLIC』読んだ時もそんな感じだったっけ・・・」
もしかしてそれは、
「それはクロウの魔術。貴女が同じ容姿をしている登場人物を何一つ疑問に思わせないで読んでいれたのもクロウの魔術。あの世界だけで通用する、ね」
「・・・・違う世界に来たからその魔術が解けて疑問に思うようになったってことですか」
「そうよ」
「だってエリオルはそんなこと一言も!」
「貴女に、話してしまっては意味がない」
「・・・どういうことですか?」
「それが、対価だったから」
対価?何の対価?
「(よく解らないから)話を戻します。どうして私にあの漫画読ませたかったんですか?」
「・・貴女には、あの物語と同じような旅をしてもらうから」
・・・・・・パードゥン?
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10.03.29
加筆修正:11/02/17