目を覚ましたピーター。ピーターの青い瞳がぼーっと五人を見回す。
「……あれ?みんな…どうしたの…?」
「ペティグリュー、貴方箒から落ちたのよ」
「……そういえば…」
「シリウスとジェームズが助けてくれたの」
「そう…なんだ。…ありがとう、二人とも…」
「どういたしまして。それからピーター。これ、落し物だよ」
机の上に置いたペンダントを指差してジェームズが言った。それを手に取り大事そうに握りながらピーターはまたありがとう、小さな声ではにかみながら言った。明らかに今までより元気がない。
「ピーター、あの箒には暴走するように細工がしてあったと思うんだ」
ジェームズのその言葉に、ピーターは俯いた。ペンダントを握る手に力が入ったのが解った。リーマスが続いて口を開く。
「ピーター、最近君の怪我が頻繁に増えた事や、教科書がボロボロの原因…それは君が…」
「…何でも、無いよ」
リーマスが最期まで言い終わらないうちにピーターが言葉を発した。全員一言も喋らずピーターの話の続きを聞いていた。
「怪我が増えるのは授業でボクが失敗ばっかりするからだし、教科書だってボクがドジだからだし…。だから…だから本当に何でもないからね!」
そう言って顔を上げたピーターは無理に作った笑みを浮かべていた。見ているこっちが痛々しく思ってしまう。涙を堪えてるのは隠しきれていなかった。
「……おい、ピーター…」
「貴方達、そろそろ夕食の時間ですよ。彼はもう少し安静にしてなければなりません。貴方達は急いで大広間へ!」
シリウスの言葉は空しくもマダム・ポンフリーの言葉によって遮られてしまった。五人はマダムに追い出される様な形で廊下へ出された。と、同時に廊下の向こうからマクゴナガルが足早に此方に近付いてくるのが解った。
「ポッター」
「あ、はい。何ですか先生」
「今直に私についてきなさい」
マクゴナガルのその言葉に全員がお前、何を仕出かしたんだ、という目でジェームズを見た。それに対し見られた本人は何もやってないよ!、という風に慌てて無言で首を振った。気のせいか、ジェームズの顔に冷や汗が見える。この様子から見るに本当にジェームズは呼び出される心当たりがないようだ。
「四人は直に大広間へ行きなさい。もう直夕食の時間です。ポッター、ついてきなさい。」
「…はい」
とりあえず行ってくるよ、という目で四人を見た後、ジェームズはマクゴナガルについて行った。
Snow White
拒絶、助けは要らない
「今日から僕がグリフィンドールのシーカーだ!」
達のもとへ戻ってきたジェームズの開口一番の言葉はそれだった。
「マジかよ!?一年生は入れないんじゃなかったのか!?」
「特別にってマクゴナガルが許可を出したんだ!」
ミネルバが許可を?一体どんな理由で。
「一体何があったの、ジェームズ?」
「そっか、はあの時いなかったんだよね。僕、ピーターのペンダントを持ってきただろ?あれ実は一回スリザリン生が落ちてたのを拾ったんだ。勿論それはピーターを虐めてるグループの奴等だったさ。だから返せって言ったらあいつ等思いっきり遠くに投げたから、それを箒で飛んで取りに行ったんだ。そしたらその瞬間をマクゴナガルが見ていたみたいで見事僕をシーカーに抜擢したって訳さ!」
…何か何処かで聞いた、っていうか見た話だ。親子は本当に似るね。
「Good job、ジェームズ!おめでとう!」
「ありがとう!」
興奮のあまりかに抱きついたジェームズをすぐさまシリウスがベリッと引き剥がした。そんなシリウスをからかいながらも皆からのおめでとうの言葉にジェームズは嬉しそうにありがとう、と応えていた。
運命が変わったのはこの時からだと気付くのは、もう少し先の事――。
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08.08.02 修正完了