サクラの数日と桜の一生
「あ、シリウス」
一昨日この女、が俺に死喰い人の行動の情報提供をしてくれたお陰で、騎士団は魔法法執行部の部長であるクラウチを無事に保護する事に成功した。クラウチを狙ってきた死喰い人も捕獲できた。
「この間は助かった。サンキュ」
「いえいえ」
「ところでお前またここに居るんだな。もしかしたらもう居ないかもって思ってたんだけど」
「言ったでしょ。私はこの桜の木の精霊。私はこの桜からは離れられないの」
「・・・お前本当に精霊なのか?」
「あー!まだ信じてなかったのねー!?」
は前回や前々回と同じようにサクラの木の枝に座っていて、今は俺がまだの言った事を信じていなかったせいか怒るフリをしているように見える。と、言うのも本気で怒っているようには感じないからだ。
「普通は信じないだろ」
「私はこの桜の精霊ですよーっだ!」
いーっ、と俺に歯を見せて悪態をついたに思わず笑ってしまった。一昨日俺に情報提供してくれた時の雰囲気とまるで違ったから。あの時は凄く大人っぽく見えたのに今は逆に子供っぽく見える。
俺は一昨日の事以来、に対する警戒心なんかはなくなっていた
「・・・何笑ってるのよ」
「ククッ、いや、別に。なあ、そこ行ってもいいか?」
俺はが座っている一番太い枝を指した。一瞬はきょっとん、としたがすぐに笑顔になって嬉しそうに言った。
「来な来な!すっごくいい気分になるから!」
その返事を聞き、俺は難なくのいる枝まで行きの隣に腰を下ろした。登ってみると案外高く、向こうに立ち並ぶ家々の屋根が結構見えた。柔らかな風が吹き、俺達の周りにサクラの花弁が舞う。
「どう?気持ちいいでしょ」
「ああ、最高だな」
「周りはどんどん闇の脅威に飲まれてきちゃってるけど、ここだけは平和だと思うんだよねー」
「・・・そうだな」
俺は自然とそう言って微笑む事が出来た。確かにここは、このサクラのある空間だけは平和だと感じる。どんなに傷ついていようと、どんなに恐怖にかられていたとしても、ここに来ればそれらは全て消えていってしまいそうな程にこの空間だけは静かで、暖かかった。
「・・・なあ、さっきの質問だけど、お前って本当にこのサクラに憑いてるのか?」
「憑いてるとか人聞きの悪い・・・この桜は私であって、私はこの桜なの。百年以上の樹齢を持った樹には時たまその分身ともいえる精霊が具現化する事があるの。それが私だよ。私が死ぬのはこの桜の樹が死んだ時」
「・・・ちょっと待て。この樹がお前だってんなら、お前の年齢って・・・」
「まあ、ざっと百歳は超えてるね」
「・・・ババア・・・痛って!殴んなよ」
俺は殴られた頭を摩りながら非難の目をに向けた。ババア言うな、とはそっぽを向いた。本当、面白い奴。
「ところでお前、俺の事を知ってたって事は他の騎士団員の事も知ってんのか?」
「うーん・・・まあ多少は。人狼の人が仲間の中にいるとか、ここ最近騎士団員の二組の夫婦の間に一人ずつ子供が生まれたとか、その内の片方は貴方が名付け親だとか」
「・・・どこが多少?」
「まあまあ、それは気にせずに。で、シリウス。私のところにはまだ貴方がその子につけてあげた名前の情報が入ってきてないんだけど、何て名前なの?」
「おう!我ながらいい名前だと思うぜ!ハリーっていうんだ」
はそう言った俺を見てクスクスと笑い始めた。笑いながら、シリウスってハリーの事を我が子のように可愛がってそうだね、と言ってきた。確かに、俺はジェームズに負けないくらいハリーを可愛がってる自信がある。
「ね、もっと何か話し聞かせてよ。だたの情報だけじゃ退屈してたんだよね。ね?どんな話しでもいいからさ」
こうして俺達の不思議な関係は始まった。
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08.08.12