月下の悪戯
いやいやいやいや。
ダメだろ。大いに犯罪だろ。銃刀法違反だろ。
「(何でそんなもん持ってんのー!?)」
この小さな探偵が懐から取り出したのは間違いなく拳銃の形をしたもの。
本物より少し小さい気もしなくはないけど、これは拳銃だろう。
あろうことか、この探偵はそれをあの明かりに向かって発 砲 し た 。
「ニャー!!!(おいー!!!)」
ダメだろー!、と続けて言おうとして気付く。今、打ったのに音してない?
と思ったら、新一が打った弾が向かった方向から、おわっ!?、という声が聞こえた。
人 に 向 か っ て 発 砲 ?
「ニャーニャー!!(おおいいぃぃ!)」
私の突っ込みも空しく、新一はまたも同じ方向へと発砲をした。どうでもいいけど、手馴れてるな。
新一は発砲を続けてる。けど、やっぱり最初と同じで音はない。あるにはあるけど、パシュッ、という音だけ。
まるでモデルガン(BB弾打つやつ)のような音がする。
本物の銃なら、バンッバンッ、と耳を塞ぎたくなるような音がするはずだろう。
新一が打ってるこの銃は一体・・?
「・・ニャッ!?(ぎゃ!?)」
こっちめがけて飛んでくるトランプ。しかも続け様に三枚も。あれ当たると絶対危ない。
こんな鋭利なトランプを寄越すのなんて一人しかいない。
「(キッドに向かって打ってたのか・・)」
すごいな、新一。でも何で明かりの所にキッドがいるって解ったんだろ?
「・・ニャニャー!!(って、ぎゃー!!)」
トランプ対銃弾。トランプが飛んでくる飛んでくる。それを紙一重で交わしてどんどん打ち返す新一。
紙一重で交わしてるもんだから、落ちないように必死に肩にしがみついてる私は更に危険。
運が悪ければサクッと刺さりそう。
・・・・・っていうかその前に銃弾はダメだろ!
トランプも危険だけど銃弾は当たったら死んじゃうよ!?
「ニャ・・ニャーニャニャ!ニャニャニャニャー!(し・・新一!銃はダメだってー!)」
「・・っ、わりーけど、今お前の言葉解読してる暇ねえんだ!」
「ニャニャニャー!(以心伝心くらいしろー!)」←ムリ
何枚目かのトランプに体制を崩し、立て直しながら標的に発砲しようとした瞬間、
「っ・・しまった!」
トランプが拳銃に当たり、新一の手から離れてしまう。飛ばされる直前、トランプの衝撃の反動で引き金を引いてしまったのだろう。あろう方向に銃口が向いているのにも関わらず弾が飛び出た。
弾が飛んでいった先からは、うわっ、という少々痛そうな呻き声が(しかもけっこう近くから)。
次の瞬間、警官が一人、こちらに倒れてきた。
「ニャニャー!(人撃っちゃったー!)」
新一の肩から地面に降り、倒れた警官を見ながら、やばいやばいやばい、とオロオロとする私。
そんな私に、落ち着け、という声がかけられた。
「よく見てみろよ」
「ニャ?(え?)」
新一に言われた通りよく見てみる。その間にも、新一は飛ばされた拳銃を、煙幕の中探している。
「・・・ニャニャニャ・・(・・・寝てる・・)」
「博士に頼んで作ってもらってたんだよ。麻酔銃の拳銃バージョン。弾は実弾より少し小さめで威力もそんなにない。まあ、BB弾くらいの威力だろうな」
「(・・・BB弾ってけっこう痛いよ・・・)」
なるほど。新一が阿笠博士から渡されたキッド対策のものってこの拳銃だったわけね。
音がしないのも発砲してると気付かれないようにだろうな。
一般市民の、しかも小学生がこんなの撃ってるところなんて見られたら色んな意味でまずいでしょ。
「・・っ、あった!」
新一が落ちた拳銃を見つけるのと、部屋に風が吹き込むのとはほぼ同時だった。
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10.06.07