「どうだった?」
「目回してた」
「やっぱり・・・」
リーマスと入れ替わりでディアミスが談話室へ降りてきた。
今頃リーマスは、あのスケール観の大きい説明に参加しているに違いない。
その大きさにピーターが第一回目のショートを起こしたようだ。
彼の、思考回路が追いつかなくて目を回している様が容易に想像でき、苦笑いを零す。
「ディアミスも四人の部屋に残って説明に参加すればよかったのに」
「そしたらが一人になるだろうと思って。リリーたちは荷物の整理で忙しいだろうし」
自分を心配してくれたディアミスの答えに何だかくすぐったく感じて小さく微笑んだ。
昔から、自分を一番心配してくれたのは彼とレンだ。
からかいながらも何かと自分のことを気にかけてくれている。
「・・・・・受け入れて、もらえるのかな・・」
「・・・・・この時代のピーターなら大丈夫だと思う。が関わったせいでいい感じに前向きになってきてたし」
「・・・・・何か・・・言葉に棘を感じる・・」
「エミュール出発前にあんだけ『深く関わるな』って言ったのに物の見事に破ったよね」
「う"・・・」
確かに出発の前夜まで延々と言われた。
関わったら傷つくのは自分自身だという事を言ってくれていたのだから、これもまた感謝しなければいけない。
まあ、その忠告を自分は完璧に無視してしまったようだけれど。
「まあ、結果オーライってことで今回はいいとして・・・」
「(お・・怒られなくてよかった・・・!)」
「・・・気になるのはの傷を治した奴だ・・・」
「うん・・・」
叫びの屋敷から転移の術で移った場所。
そこに移ってすぐに自分は気を失ったはず。
自分の傷の手当もしていなし、あの時の残りの魔力を考えると自己治癒力もかなり低下していただろうに。
それなのに、医務室に運ばれた時には傷は全て塞がっていてかすり傷一つ無かったらしい。
残ったのは自分の血だけ。聞けばシリウスは何もしていないと言うから、発見された時には既に傷は塞がっていた。
「一体誰が・・・」
「あの後、倒れた場所にも叫びの屋敷にも行ったけど何の手がかりもなかったし・・・」
「気配を念入りに探ってもそれらしき力の反応は感じない」
「・・・・・・・あの時のも同一犯なのかな・・・」
ディアミスの転移の術で医務室へ行った時。
シリウスの言葉を聞きたくなくて、三人の記憶を消そうとした時。
何故か魔法陣は出ず、忘却術は使えなかった。
「?、あの時?」
「私がディアの転移の術で医務室に行った時、シリウス達の記憶を消そうとしたのに術が発動しなかったの・・・」
「あ、それ俺」
はい、と小さく自己主張するディアミス。
それに間抜けな声を出してしまう。
「・・・・・・・は?」
「いや、だってが早とちりしそうだったから」
「え・・だってディアが力使った気配なんて全く・・・」
「それそれ」
「え?・・・あ」
ディアミスに指された方を見て納得。
自分の首に下がっている桃色のひし形ペンダント。
その正体は、天使の力を抑える制御装置。
なるほど。これを着けているから、忘却術のような難易度の低い魔力を気配を感じなかったのか。
「んー・・・やっぱ不便」
眉間に皺を寄せて呟くと、ミュータントに気付かれないためだからこれっばかりはなー、と天井を見ながらディアミスも呟く。
「ま、何かあったら俺が守るって。その為の七人の姫(セブンプリンセス)だろ?」
「・・・そうだね。頼りにしてる、アリス」
二人で視線を合わせ微笑んだ。
Snow White
またね、ホグワーツ!
「エバンズ!君としばらく会えなくなっちゃうのかと思うと寂しくて寂しく「それ以上近付かないでちょうだいポッター」
ピシャリ。
リリーの冷めた一言が今日もまた聞こえる。
それにめげることなんて知らないジェームズはなんのそので懲りずに猛アタック。
「まーたあの二人は」
「ポッター懲りないよね・・・」
「ちょ、ベル!?あんた寝るのは汽車まで我慢しなさいよ!?」
セルフィーナの言葉に隣を見ると、確かに。ベルがもの凄く眠そうだ。
ウトウトして今にも倒れてそのまま寝てしまいそうな勢いだ。
天然なのか何なのか分からないがベルはどこでも寝る。というかいつも眠そう。
この一年見ていて思った感想はそれだ。夜寝ていない訳でもないのに眠そう。
「やあ。もう準備は出来たの?」
「あ、リーマス。うん、出来たよ。そっちは?」
「僕たちもできてるよ。後は汽車に乗るだけ」
「そっか」
バチッ、とピーターと視線が合う。
「ピーター、忘れ物無い?大丈夫?」
「う、うんっ!リーマスにも言われて確認したから大丈夫っ・・・だと思う・・・・」
語尾が弱弱しくなってしまったピーター。まあ、リーマスも確認をとったのだったら大丈夫だろう。
シリウスたちが説明してくれたあと、驚愕を隠せてはいないようだったピーター。
羽と魔術を見せたときには目を真ん丸くして口をポーカーンと開けていたけど、でも怖がってはいなかった。
『は、僕の中にはちゃんと勇気があるって教えてくれたんだ!・・そ・・そんなを嫌いになんてならないよ!!』と必死に言ってくれたピーター。
本当に嬉しかった。
リリーたちには話してはいない。
できればそんなに話したいことでもないので、三人には話さないことにした。
話さないことに少し罪悪感を覚えたけれど、こればかりはしょうがない。
ふっと、シリウスの姿が無いことに気付いた。
「ブラックは?」
セルフィーナもと同じことを思ったらしくキョロキョロと辺りを探す。
そして見つけたのか、あっ、とある一転で視線を止める。
「あいつ、あんな所で何してんの?」
シリウスは自分達から離れた窓辺で片足を立て座り、その足に頬杖をついてブスーとした顔で外を見ていた。
『?』を頭の上で浮かべているセルフィーナの横でリーマスとは苦笑いを零した。
「(家、嫌いだもんね。シリウスは)」
きっと、今からあの毛嫌いする家に帰るんだと思うと嫌で嫌でしょうがないんだろう。
「よっ」
「あー・・・・アスルだー・・・」
「うおっ、ちょ、おいここで寝るなって!ベル!」
片手を上げて現れたアスルに、眠気が限界まできたのかベルが倒れこむ。
ポスッとアスルに受け止められたベルはそのまま夢の中へ旅立った様子。
「アスル、ディア。二人も準備出来たんだ?」
「完璧」
アスルより一歩遅れてきたディアミス。
遠くにシリウスの姿を確認し、苦笑いを浮かべながら溜め息を吐いた。
「分かりやすい反応だな」
「ま、しょうがないよ」
「皆!そろそろ行かないと乗り遅れる時間だ!」
ジェームズの言葉を聞き、時計を確認すると確かに時間だ。
ジェームズはシリウスを窓辺から無理やり引きずってきた。
あ、凄い嫌そうな顔。まあでも帰らないといけないんだししょうがない。
「当分、ここともお別れね・・・」
そのリリーの言葉で全員が談話室を見渡す。
何だか色々あった。
一年生のうちからこんなにも色々なことがあるとは。
この時代に来た時は想像もしてなかった。
「・・・・・うん。でもほら、また戻ってくるんだし!夏休みなんてあっという間だってリリー!元気出して!」
「・・・そうね!」
セルフィーナがばんばん、とリリーの背中を叩いた。元気な笑みとともに。
後ろで、ああ!レインズワース!それ僕の台詞〜・・・、とがっくり項垂れているジェームズの声が聞こえる。
「おら、早く行かないと乗り遅れんだろ?さっさと行くぞ」
そんなジェームズを一瞥してから無理やり立たせるシリウス。
どうやら腹を括ったらしい。
「行こっか!」
の言葉に各々返事をし、歩き出した。
次に全員が揃うのは、新学期。
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11.03.24