「くそ…っ、あいつ何処行ったんだよっ」






降り積もった雪は寒いし重たいしでうまく走れたもんじゃない。おまけに徹夜明けの目には朝陽が眩しいやなんやらで未だにあいつを見つけていないオレ。





「だー!もう走りにきい!」


「ホー」


「?、」






梟?何本とある木の中のうちの一つの枝には灰色の梟。じっとこっちを見ている。






「悪いけど今は構ってやれねんだよ」






そう言えば梟はホー、と一鳴きして枝から飛び立った。かと思えば少しだけ先へ進んでからこちらを振り返り前へ行くことを止め、再度こちらを見つめてきた。






「ホー」


「何だよ、生憎と今は餌なんか持ってねえぞ」


「ホー、ホー」






梟は数メートル先へと進みまたこちらを見た。






「・・・ついて来いって事か?」


「ホー」






一鳴きした後にまた梟は進み始めた。





「あ、おい待てよ!」






あの梟がの居場所を知ってるとは思えないが手がかりも何も無しに闇雲に探すよりかはついて行った方がいいだろう。もしかしたら何かしらの手がかりを入手できるかもしれない。











Snow White

似つかわしくない明るい光











「ここは・・・、!?」






梟に連れてこられたシリウスの目に映ったのは白と赤。そしてその場には似つかわしくないような陽の光。その場に広がる光景に一瞬たじろぐ。雪の白と羽の白。そどちらの白をも赤く染めているのは鮮血。






「っ・・・、!」






駆け寄ってその身体を抱き起こせば伝わってくるのは"冷たい"という事だけ。冷たい身体に青白い顔、それにこの血。一瞬最悪の状態が脳裏に過ぎた。微かだが息をしている事を確認してから安堵したのも束の間、シリウスはの身体を横抱きに持ち上げ医務室へと急いだ。






「(頼むから、頼むから死ぬんじゃねえぞ!)」






急いで丘を下るシリウスを見ていたのは、木の上にいた黒いローブの人影とその肩に乗った灰色の梟だけ。






























朝陽が差し込む廊下。ディアミスは欠伸をかみ締めながらそこを歩いていた。昨日一旦自分のあるべき場所(正確には国だが)に帰ったディアミスを待っていたのは留守にしていた際に溜まった仕事。"姫"には必ずその国の王の側近という役職が与えられる。あの世界のしくみのうちの一つだった。風を司る国ディガルスに生まれたディアミスも例外ではない。






「ふぁ〜・・・たっく、あの黒族のせいで仕事増えてたじゃねえか・・・」






黒族、とは最近八つの都市で見過ごせない悪事を働いている奴等の愛称であった。最も手がかりも何もなく闇に隠れるように移動をする事からディアミスが勝手にそう呼んでいるだけの事なのだが。






「・・・しかも終わんなかったし」






ディガルスへ帰る前に話したの様子が少し変だったのには気付いていた。何十年も一緒にいた仲なんだから気付かないわけがない。だから出来るだけ早く戻ってきたかた。けれどあまりにも仕事の量が多いために仕事を終わらせて帰ってくるという目標は水の泡となって消えた。

が、こちらへ早めに戻ってくるという目標だけは絶対に達成したい事だったため、溜まっていた仕事をこちらに持ってこれるくらいの量にまで必死に減らしたのだ。その結果が今ディアミスの手の中にある小さなトランクケースの中身だ。なんとか書類をこのケースに収まるくらいの量にはした。






「とりあえずこれは部屋だな」






移転術の応用でケースだけをグリフィンドール塔の自分の部屋に送った。






「・・・って、シリウス?」






遠目にシリウスが走っていくのが見えた。腕に"何か"を抱えて凄い速さで走っていた。よくは見えなかったがあれは人、だったと思う。






「シリウス!」






廊下の角を曲がっていったシリウスを追いかけて声をかける。その声に驚いたのか一瞬ビクリとしてシリウスが足を止めた。






「・・・ディアミス?何でこんな朝早くにこんなトコに・・・」


「俺はその言葉をそっくりそのままシリウスに返す。っていうか一体何を抱えて・・・っ、!?」






驚いた。あまりにも魔力が感じられなくての気配を感じ取る事ができなかった。普段この世界で制御装置をつけてようと、これだけ近くにいたら少しばかりは感じられる。けれど今は神経を研ぎ澄ましても殆ど感じる事はできない。






「っ、おい!一体どういう事だよ!」






いきなり形相を変えて半ば怒鳴るように聞いてきたディアミスに一瞬戸惑いながらもシリウスも負けじと言い返した。






「オレにだって解んねーよ!けど、よく解んねーけどはリーマスに、その・・・噛まれたみたいだし、身体もこんなに冷てえし・・・っ」






リーマスに噛まれた?、一体何やってんだよ。しかも魔力は底をついてるし、流血はしてるし。一体何をどうしたらそんなに危険な状態になるわけ。魔力が源の俺達にとって魔力が底をつく事は命に関わるってことくらい知らないわけない。自然治癒能力だってなくなるし、当然魔術だって使えない。






「とにかく医務室だ!」






離れなければよかったなんて今頃思っても遅い。結局俺はまたを守れなかった。今度こそ守るって、守ってみせるって思ってたのに。結局力なんてあったって使わなきゃ意味がない。いくら優れた能力を手に入れたからってそれを使わなきゃ意味がないんだ。










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10.05.04