「助かりました先生」






ぺこり、とが軽くお辞儀をするとダンブルドアは相変わらずの笑顔で楽しそうに言った。






「いやいや、わしはディアミスの策に乗っただけじゃよ。中々見事なものじゃったぞ、ディアミス」


「ありがとうございます」


「さて、ディアミス。明日からのホグワーツ生活に備えて今から君の杖を買いにいかねばならん。森番のハグリッドが正面玄関の前で待っているはずじゃ。一緒に行って買ってきなさい」






まだディアミスは杖を買っていなかったのか。っていうかもしかするとこの男はまだ明日への準備が殆ど終わってないのでは?、とそこまで思ってそんな事はないと頭を振った。案外几帳面な彼だ。明日の準備も杖以外はもう終わっているに違いない。






「解りました」


。君は大広間に戻るのじゃ。そして存分にパーティーを楽しみなさい」


「はい」






二人の了承の言葉を聞いたダンブルドアはまたにっこりと笑ってその場を去ろうと踵を返し数歩歩いたところで、おお、忘れるところじゃった、と言って止まった。それに二人が首を傾げていると校長はやはり笑顔で振り返って言った。






、その服とても似合っておるぞ」






一瞬何を言われたのか解らなかったが、直に今自分が来ている服を褒められたのだと解り、ありがとうございます、と返した。今まで全く別の話をしていた為か、突拍子もないダンブルドアの言葉に少し呆気にとられてしまったのだ。ダンブルドアはのそのお礼を聞くと今度こそ丘から立ち去り、光り輝いているホグワーツ城へと戻って行った。






「…もしかして私達を助けてくれるだけの為に此処に来てくれたのかな?」


「そうかも」


「感謝です、先生」


「確かに。それにしても、ハリーって本当に親にそっくりなんだ…」


「ホント、似てるよねー」






の脳裏にジェームズと初めて会った時の事が浮かんだ。あまりにハリーに似ていたジェームズをハリーと間違えたんだっけ。あの時はかなり焦ったのを覚えてる。






「…やっぱりアレだよな」


「アレって?」


「覚えてない?俺が言った言葉。"ハロウィンには何かが起こる"」


「あ…」






そういえば、未来の世界でディアミスはそんな事を言っていた。毎年ハロウィンの日に何か起きるのでそう言ったのだ。あの言葉は過去の世界でも有効らしい。






「じゃ、来年もまた何かあるって事なのかな?」


「確証はないけど」


「来年は何が起こるんだか…」






できれば何も起こらないでほしい、と思うの隣で、あんまり大きな事は起こらないほしいよ、と呟くディアミスに同感、と相槌を打った。






「じゃ、。俺はそろそろ行くよ。ハグリッドが待ってるみたいだし」


「解った。あ、ディア。見て驚いちゃダメだよ?ハグリッドったら未来と殆ど変わってないの」


「大丈夫。その辺りはダンブルドアを見て解ったから」






自分達の言葉に思わず笑いが漏れる。そしてはふと思った事を口に出した。






「そういえばディアミスは今夜何所で寝るの?」


「明日の夜の組み分けの儀式までは校長室で待機。だから寝るのも校長室」


「組み分けの儀式やるの?全校生徒の前で?」


「らしいよ」






転入生の組み分けも、新入生と同じで全校生徒の前で行うのか。誰であろうと緊張しそうな場面だが、目の前の人物はそんな事はなさそうだ、と密かに胸中で呟いた。






「ちゃんとのいるグリフィンドールに行くつもりだから」


「うん、待ってるね」


「じゃ、また明日の夜に、


「うん。また明日会おうね、ディア」






手を振って丘を降りて行くディアミスを見送った後、は此処へ来た時と同じ様に空を仰いだ。其処には先程と変わらずに、月が輝き何万もの星が煌いていた。もう少ししたら、この場所からも一等星のシリウスが見える時期になるだろう。






「…大丈夫」






これから先の全ての事に対しての、おまじないの言葉。大丈夫、きっと成功させる。大丈夫、諦めたりはしない。大丈夫、歩みを止めたりはしない。











Snow White
王子様のお怒り











「納得いかねえ」






丘を降り、この中庭まで戻ってくるまで一言も喋らなかったシリウスが開口一番にそう言った。






「で、でも…校長先生にああ言われたし…」


「だからってあれで納得しろっていうのかよ!」






シリウスが声を張り上げたのに対してピーターは肩をビクッと震わせた。それに気付いたシリウスは小さく悪ぃ、と謝った。






「でも僕等のせいでが退学っていうのは嫌だろ?」


「決まってんだろ!」


「だったら、今はさっきの事は何も聞かない方がいい」


「っ、けど!」


「シリウス」






シリウスの言葉を静かに遮ったのは今だ俯いているリーマスだった。ジェームズがその様子のリーマスに眉を少しだけ潜めたのには誰も気付かない。






「…きっと、もそれを望むと思うよ」


「リーマスの言う通りだシリウス。を困らせたくはないだろう?」






その言葉を聞いて、少しの間下の方を悔しそうに見ていたシリウスだが、チッと舌打ちをした後一人でズンズンと歩いて行ってしまった。それをピーターはオロオロと見ながらジェームズに言った。。






「ジェームズっ、シリウス怒っちゃったのかな?」


「大丈夫さピーター。シリウスは、今ちょっと一人になりたい気分なんだよ」






いつもの調子で答えたジェームズに少しばかり安堵したピーターは少しを落ち着きを取り戻した。






「(シリウスは多分大丈夫。心配なのは寧ろ…)」






チラリ、とジェームズはリーマスを見る。未だに俯き加減で、その表情は見えない。とりあえずはダンブルドアの言った通り大広間に戻った方がいいと判断したジェームズは残った二人に僕等も行こうか、と言って歩き出した。











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08.08.08 修正完了