ホグワーツの校長室に一陣の風が吹いた。そして次の瞬間には、其処に一人の青年が。少し長めの黒髪を後ろで結っているサファイアの瞳をした青年。青年は目の前に座る老人に微笑みかけた。






「久しぶりだな、アルバス」


「よう来たのう、レン」






ダンブルドアはレンをソファへ座るようにに言うと、魔法でティーセット一式とティーカップを取り出した。そして自分もレンと机を挟んで向かいのソファへと座り、客人と自分の分の紅茶を注いだ。差し出された紅茶をお礼を言って一口飲んだ後にレンが早速と言わんばかりに本題を口にした。






「今"この世界"に歪みが生じていると言う事は前に手紙で話したよな。も言ってたはずだ」


「勿論、言っていたとも」


「世界"は一つじゃない。それは貴方も知っているはずだ。・・・実は歪みが生じているのは"この世界"だけじゃないんだ。"この世界"の他にも今二つ程ある。

…アルバス、がここに来た理由を知ってるか?」






ダンブルドアはゆっくりと頷いた。






「知っているとも。悪いとは思うのじゃが、が隠そうとしている本当の目的もじゃ」


「貴方ならそう言うと思った。

今、空間の歪みは"この世界"も合わせて三つ。その中でも"この世界"が一番歪みが大きい。幾らが姫だと言ってもあいつは他の目的も持ってる。あいつだけじゃ少し厳しい。だから"こっちの世界"から一人、七姫(セブンプリンセス)をこっちへ送ろうと思う。勿論、の援助として」






言葉を切り、カップをソーサーに置いてから、レンは続きを話し始める。






「そいつをホグワーツへ転入生として入れてほしいんだ」


「生徒が増えるのは喜ばしいことじゃ。ホグワーツはその生徒を歓迎しようぞ」






にっこりと朗らかに頬笑むダンブルドアにレンも微笑んで感謝の言葉を述べた。











Snow White
毒りんごを持つのは悪戯な黒猫











十月三十一日。今日は年に一度のお祭り、ハロウィン。朝から学校の至る所にカボチャのくり貫かれたものやランタン、その他に蝙蝠の飾りなど、ハロウィンらしいものが飾られていた。






「…あのー、三人とも、私別に出なくてもいいんだけど…」


、動いちゃダメ」


「あ、はい(って何従ってんの、私)」






ベルに髪をセットしてもらっている最中に少し首を捻って後ろの三人に抗議しようとしたが、ベルに制されて何故だがそれに大人しく従ってしまった。只今の時刻、午後の六時二十分。ハロウィンの今日、夜に仮装パーティーが開かれる予定になっていた。は興味こそ少しあったが、他にすべき事もあり自由参加をいい事にパーティーには行かないと決めていたのだが、その事がルームメイトの三人に知れた瞬間、もの凄い勢いで絶対に連れていく、と言われ、今に至るのだ。






「折角のパーティーなのに出ないなんでダメに決まってるでしょ!は可愛いんだからこのパーティーには絶対参加よ」


「いや、あの、セルフィーナ、可愛い事とパーティーに絶対参加の関連性が解らないんだけど?っていうか別に私は可愛いくは…」


何言ってるのよ!貴女は十分可愛いわ。それに貴女みたいな可愛い女の子を着せ替える私達の楽しみが…じゃなくて、」






リリー今の言葉は何。要は私は着せ替え人形なのか。女の子は恐ろしい。否、自分も同じ女だけれど。






「兎に角、私達に任せて!」


「(…もうどうにでもして下さい…)」






自信満々に自分の胸の辺りを叩くリリーを見て、は諦めたかの様に本日何度目かになる溜息をついた。















ぴょこぴょこと動く黒い耳。チリン、となるリボン付きの鈴が結ばれている黒い尻尾。






「いぇーい!黒猫娘の完成ー!!」






セルフィーナがやっと完成ー、という風に声を上げた。その両脇でリリーは満足そうな笑みを浮かべ、ベルはおー、と拍手をしていた。

魔法で生やした耳と尻尾。オレンジと黒を基調とした胸元がざっくりと開いたトップスに、下はミニスカート。トップスの上には薄手の長袖を着ている。そして胸元には黒猫と魔女らしいもののタトゥーペイントといつも身に着けている制御装置のペンダント。空色の髪は緩く巻かれ、歩くたびにふわふわと揺れていた。






可愛いー」


「…ありがと、ベル。このまま明日の朝まで休ませてくれればもっと嬉しいんだけど…」


「わー、リリー可愛いー」


「(話逸らされた…っ)」






またも溜息をついて自分と同じように仮装をしているルームメイト達を見渡す。天使のベルに可愛らしい魔女の格好をしたセルフィーナ、そして妖精のリリー。リリーの格好を見たジェームズはどんな反応を示すだろうか。






「やっぱり頑張った甲斐あってとっても可愛いわ!」






そう、確かに三人は朝から自分の為に頑張ってくれた。どの服装が一番似合うだとか、どんな感じのメイクとヘアにするだとか色々だ。そして当の本人はというと、その度に着せ替え人形のような扱いだ。準備をしてくれた三人よりも絶対に自分の方が疲れている、とは内心思った。






「それにしてもやっぱりは凄いよね。魔法で猫耳と尻尾を出せるなんて」


「変身術の応用だよ…」






半分げっそりしながら答えた。そう、最終仕上げとして耳と尻尾を出したのは紛れも無くこの自分。あれだけ三人に懇願されれば出さなければ、という気持ちにもなるというものだ。






「よし!じゃ、皆準備出来たしそろそろいこっか!」


「もう行くの?」


「だって他の人の仮装も見てみたいじゃない?」






ね?、とウィンクをしながら部屋の扉を開けたセルフィーナ。それに苦笑いしながら曖昧に答え、部屋の外へと出た。










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10.12.09 修正完了