Snow White
いざ、深い森の中へと
この世界には、八つの国がある。
雪を司るリーミスト。
水を司るウォラスト。
風を司るディガルス。
氷を司るヴィーネ。
地を司るアスリル。
雷を司るレイレス。
華を司るフィリア。
そして、炎を司るエミュール。
八つの国が有り、"この世界"は保たれている。他の世界も。
「それじゃ、行くね」
「気を付けろよ」
都市エミュールの王宮、玉座の間。其処には今、少女と青年が一人ずつ向き合って立っていた。青年は黒髪にサファイア色の瞳。一方の少女は薄い空色の髪にワインレッドの瞳。首にはひし形をした桃色の石が長いチェーンに通され、掛けられている。青年が少女の頭をくしゃりと撫でると少女は嬉しそうに微笑んだ。
「うん。レンの方も、仕事頑張ってね」
「、本当にいいのかよ?あっちにいる間も今まで通りに仕事するなんて」
「いいのいいの!遠慮せずにどんどん送ってよ」
少女のその返答に青年、レンは微笑んでサンキュ、と再度少女の頭を優しく撫でた。《仕事》とは、政務の事。レンは都市エミュールの皇帝。類稀なる能力と強さを持ったこの青年は若干十五歳でこの都市の皇帝の座へと就任した。そんな彼の側近がこの少女なのだ。側近は皇帝に仕え、皇帝の支えとなる。皇帝の仕事は自分の仕事。そう在るのが側近なのだ。
「…なんて、向こうじゃ書類以外の仕事は出来ないんだけどね」
「気にすんなって。こっちからすりゃ、書類だけでも十分助かるしな」
「…ありがと、レン」
「お前は、お前にしか出来ない事、しっかりやってこいよ?」
「…うん」
少女はその返答と共に優しく嬉しそうに微笑んだ後、青年から大きく一歩後退する。
「じゃ、行ってきます」
「おう。頑張れよ」
コクリと頷いた後、少女は目を瞑り呪文を唱え始めた。この世界から発つ為の呪文を。少女の足元に魔方陣が浮かび上がるのと同時に桃色の気が少女を包み始める。
「haytrumaneu;p,.ma...ejiajenr...:ajuneung,,,,jueneubaye.fferkuy...............[Hogwarts] 」
次の瞬間、少女の姿はその場から消えた。否、この世界から消えた。始まったのだ。少女の長い長い、運命を変える物語が――。
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10.012.09 修正完了