土方さんに羅刹(なんだか吸血鬼のようなものらしかった)の説明をしてもらって(『未来の世界にこういった奴はいるか』と聞かれたから、『西洋のお化けにそんなようなものいます』とだけ伝えた)、その場にいた新選組幹部の皆さんの紹介をしてもらって、とりあえず元の世界に帰れるまでお世話になるから(土方さん曰く監視らいしいけど)皆さんに改めてご挨拶して、そんでもって早速男装をしましょうということになりました。
はい、そこまではオーケー。ノープロブレム。途中、沖田さんにいじられ、それに抗議してたら『煩い』って土方さんに怒られたりしたけどそんなのは問題じゃあない。
問題なのは今だ今。なうだよなう。今を見ようよみんな。






「・・・・・・・・・・これどうやって着んの!?」





一番背丈が近かった平助(そう呼んでいいと許可を貰った)に男物の着物を借りて今現在試着中なのだが、なんなんだろうかねこれ。
まず、この襟の部分は右が前?左が前?あれ?浴衣ってどっちが前だったっけ?正しいのと逆に着ると死人の着方になっちゃうんだよね?え、しかも袴って何これ。どうすればいいの?
ていう自問自答を繰り返して早10分。
この部屋に私と自分の着物を置いて、『着替え終わった頃にもう一回来るから』と言って平助が皆がいる部屋に戻っていったのも約10分前。
着替え終わった頃、だと?このまんまじゃあと30分はこのまま自問自答だよ!もう子供でもなんでもいいから着方分かる子連れてきて!
女の子で是非!!←ここ重要






ー、着れたか?」





と思ったら平助戻ってきた!うっわどうしよう!本格的に全く着れてません!!

私はスパンッと勢いよく部屋の障子を開けた。
部屋前に立っていた平助はいきなり障子が開き、しかも中から私が勢いよく顔を近づけてきたものだからすっごいビクッて驚いてた。あ、面白い。






「ぅわっ!?び、吃驚したー。って、全然着替えてないじゃん」

「・・・・・・平助・・・」

「な、なんだよ・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・現代人をなめるなよ・・・!」






初っ端から一人で着物が着れるかああああああああああああああ!!!











自由に生きろ











「え、土方さんってまだ私のこと信用してくれてないんですか?」






平助に着替えを手伝ってもらい(というか着方を教えてもらった後は部屋から退室をしてもらった)、なんとか男の格好をした私は皆のいる部屋に戻ってきた。
で、そこで最初に交わされた私と近藤さんと土方さんの言葉。





『ところで私って、この屯所内では出歩き自由なんですか?』

『勿論だとも。何か不自由なことがあったら遠慮なく言ってくれ』

『わー!本当ですか?ありがとうございます!何か過去に来て、飛ばされた先が新選組で良かったなー』

『・・・・・言っておくが、この屯所内から出るのは禁止だ』

『・・・は!?何で!?どうしてですか!?』

『出たって意味ねえだろうが。お前が元の時代に帰れる手がかりが表にあるってんなら話しは別だが、違うだろ。隊士でもない奴が屯所内を出入りしていると市中の奴に知られたら面倒だろうが』

『えーえーえーえーえーえー』

『煩せえ!それに俺はまだお前のこと全部信用したわけじゃねえ』







って会話がなされて冒頭の質問に戻る。






「ったりめーだろ。さっき会ったばっかの女の全部を信用しろなんて無理な話しだ」

「何ですと!?私はもうここの人たちのこと多いに信用してるんですけどー!(っていうか頼れるの貴方達くらいだし)」

「まあちゃんの場合は右も左も分からない場所で頼れるの僕たちくらいしかいないから信用せざるを得ないんでしょ」

「(・・・・うわー!デビル!!デビルの笑顔で読心術使ったぞこいつ!!!)」

「何かな、その顔」






みょーんと沖田さんに両頬を引っ張られた。ああ、本日二回目。
ほっぺ伸びてたるんだらどうしてくれるんだ。






「とにかく、お前が俺たちに害をもたらさないっていう保障はどこにも無え。当分お前は外出禁止だ。置いてもらえるだけ有難いと思え」






うっ!確かに・・・!
いきなり現れて『未来からやってきました』なんて女を心広くもここに置いてくれて(私の特異体質のことがあったからみたいだけど)、なんかご飯もちゃんとつけてくれてお風呂も貸してくれて屯所内は自由に歩いてOKって言ってくれて・・・・・何気にいたれりつくせりなのにこれ以上贅沢言えないっていえば言えない。
っていうか言えない!!よくよく考えてみれば失礼すぎて言えない!






「・・・・・は!でもお金とか稼がないと服とか買えない!」

「服は当分平助の借りろ」

「え、それはそれで平助に悪いんじゃ・・・・」

「別に俺は構わないぜ。俺のじゃちょっとデカイみたいだけど、それでもいいなら」

「いや、もう貸してくれるだけで有難いっていういか。デカイのなんか裾捲くればなんとでもなるっていうか。とりあえずありがとうございます」





深々と平助に向かって頭を下げた。それに平助は慌てて顔を上げろってオロオロしてる。何だよこいつ。やっぱり超絶かわいいじゃないか。どこぞのデビルとは大違いじゃないか。






「・・・でも、ご飯出してくれるってことは食費一人分増えるわけだし、やっぱり置いてもらう身としては家賃くらい払わないと・・・」

「・・・・・・・働こうにも、あんたはこの時代の常識を知っているのか?」






今までほっとんど喋らなかった(多分自己紹介の時しか口を開いてない)斉藤一さんがこっちをじっと見て聞いてきた。
常識・・・?あれか?通貨が何だとか、京の地理だとか?






「先ほど平助から聞いたが・・・袴一つ着れないあんたじゃ、どこも雇ってくれないだろう」






・・・・・・・・・。
はっはっはっはっは。何だとこのヤロー。すました顔で何言ってんだこのヤロー。
その通りです、はい。

通貨だって地理だって勉強した程度しか知らないっての。こんな実践で使えそうな知識は殆ど無いっての。じゃあ無理じゃん。






「そういうことだ。何も知らないお前を易々と外に出すと迷惑を被るのはこっちだ」

「トシ!そんな言い方は・・・」

「あ、いいんですいいんです。本当のことなんで。とりあえずこの時代について徹底的に勉強しますから」

「そうか、すまんな。その内、一人での外出は無理でもここにいる誰かとともになら外出許可が出せる時が来るかもしれんから、それまで辛抱してくれ」

「はい」






お、やった!外出できる希望見えてきたぞ。






「その場合一番に考えられるのは総司だよな」

「嫌だな、左之さん。この子が僕の小姓になることは認めましたけど、僕がこの子の面倒を見るだなんて言ってないじゃないですか」

「総司・・・テメェはまだそんなこと言って」

「ところで、

「?、何ですか・・・えーっと・・・左之助さん」






原田左之助さん(確か名前あってるはず)。この時代にこんな髪の色の人がいることに吃驚。これ、地毛?とか疑うほどに原田さんの髪は赤っぽい。・・・この人の遺伝子も相当凄いものなんだろうな・・・・。






「『さん』って・・・なんかこそばゆいな。左之助でいいぜ。平助と話す時みたいに砕けた感じで話してくれて構わねえし」

「ありがとう!あ、じゃあ皆と同じように左之、って呼んでいい?」

「おう。でよ、お前格好は男になったが髪結わねえと男に見えねえぜ?」

「あ・・・」






確かに現代でも男装する時は髪結うのが基本(?)だしね。なんかここの人たちも皆髪結ってるし。(永倉さんだけ結える長さないからやってないけど)

肩下まである黒い髪(前は染めてハニーブラウンとかだったけど受験面接のために真っ黒にした)を束ねて、平助と同じくらい高く・・・にするには櫛がないから出来なかったのでそれよりも下の方まで持っていき、腕にあった黒い髪ゴムで結わいた。
・・・・・・・・んだけど、






「え、何その反応」





なんか皆すっごい驚いた様子でこっち見てんだけど。
あの土方さんでさえ、ちょっと驚いてるように見える。何々?私なんか変なことした?






・・・お前・・・今の、何だ?」






今の?今のって何よ左之。代名詞じゃ分からないって。






「今、何か髪結わいたもの伸び縮みしてなかったか・・?」

「?、当たり前でしょ??」

「すっげーすっげー!なあ、よく見せてくれよ!」






何だ何だ平助、いきなり。そんなにゴム珍しいか?んなわけないだろ。自分だってつけてんだか、ら・・・・






グワシィッ






私は近寄ってきた平助の頭を、思いっきり鷲づかみにし、そのままグリッと真横を向かせた。
いだだだだだっ、と叫ぶ平助の声も無視して綺麗に結われているポニーテールに目を近づける。






「・・・・・・・・・・・・これ、ゴムじゃないの?」

「はっ?ごむ??つか、痛いって!!」






まさか、この時代に髪ゴムって無いの!?
皆平助のように紐で結んでるの!?

・・・・・・・・・・・・・え、じゃあ沖田さんの髪型ってどうなってんの・・・?








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(11.07.27)