うわあ・・・素敵に『こいつ頭本当に大丈夫か』っていう表情、ありがとうござます土方さん。
でも、多分私の考えは当たっているんですよ。
文久と新選組、外来語を知らない沖田さん(多分本物)、いきなり現れたらしい私。
私はタイムトラベラーとなったんじゃなかろうか。
自由に生きろ
「あのですね、まず先ほどに言ったように、新選組は私の生きていた時代から百年も前の時代に生きていた人たちの集まりなんです。彼等の生きていた時代に文久という年号もありました。新選組のことは多くの書物とかにもなってるわけですよ」
そう。新選組の事は教科書にも載っているし、色々な小説や漫画、歴史本なんかも出されている。昔はただの人斬り集団とか言われて悪役だったっぽいけど、現代では違う。
私の友達にも新選組好きはたくさんいた(主に漫画に影響を受けた子たち)。
「・・・・なら、俺たちに関わる何かを言ってみろ。この京の人間が知らないようなことをな」
「・・・え・・」
「俺たちのことが書物となってお前の時代にはあるんだろ?だったら答えられるよな?」
それが答えられたら信じてやるとでも言いたそうだ。
えー・・・この時代の一般人が知らないことって何だよ。私だってそこまで詳しくねえよ。漫画と受験勉強でしか知識は得てないよ。その程度だよ。
沖田総司は不治の病で死にますとか?いやいやいや、そんなこと本人の前で言っちゃダメだろ。
原田左之助と永倉新八は途中で隊を脱退します?いやいやいや、仲間関係を今から疑わすようのことをしてどうするんだ。
・・・・・・・・・・お!これならどうだ!
「・・・・・土方さんは実は詩人です。『豊玉発句集』という詩集があります」
「なっ」
土方歳三好きの友達が何句か教えてくれた気がするんだよねー・・えっとー・・・何だっけかな・・・
「確か・・・梅の花、一輪咲いても「分かったからそれ以上言うなっ」
むっ。ちょっと思い出しかけたとこだったのに。
え、何ですか。土方さん、自分の句言われるの恥ずかしいの?
まあ私は信じてもらえれば何でもいいさ。
とりあえず今のところ頼れるのは彼等だけなんだから(でも彼等が危険人物ではないと決まったわけじゃない)
「・・・総司、笑ってんじゃねえ」
「いやー、土方さんも一人の女の子に振り回されるんですね」
私の隣でさっきから沖田さんが笑ってる。
え、そんなにさっきの土方さんの反応面白かった?
「それで、あの、信じてもらえました?」
「・・・・ああ」
「未来から来たんだったら僕との話しが噛み合わなかったのも理解できるよ」
「学校と制服を知らないって言ったときは本当に一度頭をかちわってその中を覗いてみたいと思いましたよ」
「その前に、君は僕に斬られるよ」
笑顔でそう言ってくる沖田さんは鬼です。あ、鬼は土方さんらしいからこの人は悪魔か。このデビルめ。
「で、お前はどうするんだ?」
「はい?」
「何でこの時代に来たとか心あたりはあんのか?」
「いいえ、全く」
「じゃあどうやって戻んだよ」
「・・・どうしましょう」
「行く当ては?」
「・・いや、もう、全く。見ず知らずの土地ですし・・・」
ええええええ。
また問題発生かよ。一難さってまた一難だな。それともさっきまでのは別に問題じゃなかったってか、冒険を始めるための単なる序章に過ぎなかったってか!あれ、もう自分が何言ってるか分からなくなってきた。
「言っとくがここには置けないぞ」
「えええええええええ!!土方さああん!そんなこと言わずにいいいいい!!」
「知るか」
うわ!何このドライ人間!女の子一人が見知らぬ土地で路頭に迷っているんだぞ!助けろよ!!
「突然来たんだからそのうち戻れるだろ。うちにはお前を置いとけるだけの余裕はない。それにここは女人禁制だ」
「いつ戻れるかなんて分からないんですよー!男装でも何でもしますから!」
「未来人に興味がないわけじゃあないが・・・どうもお前を置いとくと厄介ごとになりそうな気がしてならん」
なんだとこのやろー!人を疫病神みたいに!そんなこと・・・あるわボケー!!(逆ギレ
「(でもこんな所で路頭に迷うのは嫌だ・・!)新選組はお上の民を守ってくれるんでしょー!女の子がここで路頭に迷ってますー!!助けてくださーい!」
某映画風に叫んでみたら、煩せえ、と一喝されてしまった。うっ・・・薄情者!
「・・・・沖田さあん・・・」
私は標的を変えて、横にいる沖田さんへと視線をやった。
ここで見捨てられるわけにはいかない。
こんな右も左も上も下も分からない場所でぽいされたら確実にのたれ死ぬ!
この世界のお金も持ってなのにどうやって生きろっつーんだ!
とりあえず話し通じるし、本気で斬りかかってこないし(いやちょっと斬られたけど!)、この時代の過激攘夷派の方々に遭遇するより安全そう。
「君、散々僕のこと馬鹿にしたの覚えてる?」
「(げっ)」
「今『げっ』て思ったでしょ。顔に出てたよ」
「(ちっくしょー・・・そんな些細なことをネチネチと!)」←些細ではない
「でも、ま、置いといた方がいいと思いますよ」
え!?マジで!?それマジで言ってくれてるの沖田さん!
神。あなた様は神であらせられる!
出会い頭に散々馬鹿にしてごめんなさい!
「・・・・・こいつを置いとくに値する理由でもあんのか?」
土方さんがすんごく不機嫌そうに沖田さんを見る。
うわあ、また眉間の皺濃くなってるよ。もうあれ痕になるんじゃないか?
でも美形がすると何でもかっこいいのは事実です。はいここ重要!
「その子、傷の治りが異様に早いんですよ」
「・・・・何?」
「さっき、脅しでこの子の顔を少し斬ったんですけど、数秒後にはもう跡形もなく消えました」
うわ!ばらされた!の最大の秘密ばらされた!この裏切り者め。今すごく崇め奉ってたのに一気にあなた様の株は急降下よ!ジェットコースター並に落下したわ!!
くっそー、また化け物とか言われるじゃんか。しかも今回はあれですよ。巷で大人気な新選組の副長、土方歳三にですよ?イケメンにですよ?そう、イケメンにで す よ ?(大切なので二回言います)
イケメンに化け物とか言われたら立ち直るのに時間かかる・・・山田に化け物とか言われた時の立ち直りの時間が0.001秒くらいだとしたら、土方さんに言われた時は5秒くらいかかる。(要するにあまりへこたれません!だってちゃん強おいお!)
「・・・・・お前、羅刹なのか?」
「羅刹?」
羅刹って・・・あれでしょ?鬼のことでしょ?
え、鬼の副長に鬼とか言われたくないわ。
少なくとも私は蝋とか五寸釘を使った拷問しないよ。そもそも拷問自体しないよ。
何を言ってるのか理解できなかったけど、羅刹かって聞いてきた土方さんの目があまりにも真剣で、しかも険しい感じだったので、正直にそれが遺伝的なものだと説明した。
「遺伝、だと?」
「え、そんな疑わなくても。え、遺伝だと何か不都合でも?」
「そうじゃねえ」
難しい顔をする土方さん。
そんな顔も素敵だよあなた。もうグッジョブだよ。GJだよ。
「・・・・・・解った。いくつか条件はあるが、お前をここに置いてやる」
「え!ホントですか!?やったー!」
良かった!これで路頭に迷わなくて済みそう。
私が過去に飛ばされちゃった理由も、滞在先があれば調べやすそうだし助かったー!
「ありがとうございます土方さん!いやー、土方さん優しい!マジ神!土方さんの書いた句、意味解らん歌とか言ってごめんなさい!」
友達に聞かされたあと、最初に私が発した言葉は『何それ、意味解んな』だった。
ごめんね、土方さん。意味解らない歌読んでても優しい人に変わりはなかったよ。
「そうだよね!今でも意味は解らないけどとりあえず土方さんは良い人だよ。梅の花 一輪咲いても 梅は梅!行く年の 月日の流れ 蚊帳の外!!えーっと後なんだっけ?・・あ!しれば迷ひ しなければ迷わ「だー!お前ちょっと黙れ!!」
「もがー!(ちょっとー!)」
土方さんが勢いよく私の口を押さえるもんだから、私は後ろに手も付けず倒れこんだ。
まあ勿論私と一緒に土方さんも倒れこむわけで。
倒れた私の上に土方さん。でも別に二人の間に熱い恋の炎なんて芽生えるはずもなく。
「もががー!(離せー!)」
勢いよく暴れる私。それを必死で押さえようとする鬼の副長。
沖田さんは横で面白そうに笑ってる。(っていうかニヤついてる)(ホント何なんだあの人!)
そうか!土方さん自分の歌読まれるの恥ずかしいんだっけか。忘れてた。
と、そんな状況の中、障子が開けられた。
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(11.01.15)