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今僕達は場所を移動して土方さんの部屋の中にいる。

あのミシャって子は土方さんの前で正座。僕は彼女が逃げ出さないように障子の前に座った。

あの子は、一言で言えば変な子。
僕のことを強盗犯扱いするし、意味分からない単語をたくさん言うし、何より話しが噛み合わない。
でも、






「(何度か怯んでたけど、刀を向けられてあそこまで堂々と喋れるなんていい度胸だよ)」











自由に生きろ











「で、お前の名前は」

「(ええええええ何この人おおおおおお!めっさイケメン!自称:沖田さんと同じくらいイケメン!!何!?これが自称:沖田さんの言ってた土方さん!?)」

「・・・・・おい、聞いてるのか」

「えっ?ああ、はい名前?聖海ミシャですが。あなたはこの(自称)沖田さんのお仲間ですか?」

「随分とでけえ態度で話すな。お前、今の自分の状況解って喋ってんのか?」






彼女の言葉に土方さんは眉間に皺を寄せた。やっぱりね。僕だってイラってくるんだし、土方さんは気が短いから絶対にそうなると思った。






「いえ、まったくさっぱりですけど。何で家にいた私がこんな純和風な家にいるのかさえも解りません。ついでに言えば(自称)沖田さんの頭が心配です。場合によっちゃあなたの頭も心配です。とりあえずもう撮影でも何でも協力するんで一旦うちに返してください」






一気に捲くし立て、最後には手を縛られた状態で頭を下げる聖海ミシャ。
本当にあの子凄い仕込まれてるね。っていうか今どさくさに紛れて凄い失礼なこと言われた気がするんだけど。
あーあ。ほら、土方さんもそれに気付いて青筋立てちゃってるよ。まあ僕は面白いからいいけど。






「あ"ぁ"?意味分からねえこと言ってねえで吐け!お前長州の間者だろ!」

「(うわあ・・・この人も話し通じないタイプかよ・・!)あの、ホント、お願いですから役から一旦離れてください。新選組が好きな気持ちはよーく分かりました。でもですね、私は全くこの状況を理解できてないんですよ。ていうか何で私なんですかね。。私、新選組についてそんな知らんですよ。江戸の末期に活躍した人たちの集団ってことしか知らんです。あ、有名な幹部の方々の名前とかなら知ってますが。あとは漫画で読んだ程度どか・・・」






ぺらぺらと息付く暇もなく話し出した。
本当に面白いよ、この子。土方さんの前に来てもなお、この調子だ。
このあと何されるか解ってるのかな?

それにしても・・・・






「(この子の話し方だと、まるで新選組が過去の人間のような話し方・・・・やっぱりいけ好かないな、この子。)」






勝手に僕たちを過去の人間にしないでくれるかな。






「お前の言い方だとまるで俺たちが過去の人間のように聞こえるな」






僕と同じことを思っていたのか、土方さんが彼女を嘲笑うかのように言った。
明らかに相手を馬鹿にしてる態度。勝手に俺たちの時代を終わらせるな、まだまだこれからだって言うような感じ。
そうだ。新選組は、近藤さんは、こんな所で終わったりしない。まだ、始まったばかりだ。


そんな土方さんに対して、聖海ミシャはケロっと、あたかも当然のように言い放った。






「だからその役になりきるの一旦止めてくださいって。新選組は過去の人間。今から百年前の人たち!あんた達はとりあえず今は現代の人に戻る?オーケイ?」






オーケイ?何それ。
それに何今の言葉。この子本当に頭大丈夫かな。
僕たちが今から百年前の人間?何言っちゃってるの。僕たちは今ここにちゃんと存在してる。

土方さんの方を見ると、さっきよりも眉間の皺を深くしていた。






「・・・・・おい」

「はい?(やっとちゃんと話す気になってくれた!?)」

「今、何年か言ってみろ」

「は?平成23年でしょ?年明けてからまだ二ヶ月くらいしか経ってないですよ。大丈夫ですか」

「今は文久だ。平成なんて元号はない」

「(まだ言うか・・!)だあからあ!・・・・・」






呆れたように一旦項垂れ、再度顔をあげた聖海ミシャ。でも何かを言おうとして止まった。
じっと土方さんの方を見ている。

さっき言ってた平成って本気だったんだ。






「・・・・・(目が、本気だ・・・)あの、ここは何処ですか?」

「・・・・・・京にある、新選組の屯所だ」






その言葉の後、彼女は僕の方に勢いよく向き直った。
正直あまりの迫力に内心びっくりした。






「(自称)沖田さん!」

「・・・何?」

「私は、沖田さんが寝てる間に沖田さんの隣に現れた、合ってます?」

「さっきからそう言ってるでしょ」

「現れた現場を見てます?」

「それは見てないけど・・・」

「気配は感じなかったですか?」

「・・・・」

「沖田総司ともあろうものが小娘一人の気配も感じられなかったんですか?」






何この言い方。すごいイラつくんだけど。
何、僕のこと馬鹿にでもしてるわけ。っていうか絶対してるよね。もう本当に斬っちゃっていいかな。

僕が刀に手をかけると手を縛られたまま彼女は先ほど同様、待ったの仕草をした。






「沖田総司大好き人間だったら、普通今の質問で『気付いた』っていうよね?だって沖田総司は天才剣士とか何とか言われてたし、寝ていようが小娘一人の気配も感じられなかったの?とか挑発的に聞かれたら、好きな人物守ろうととかして『気付いた』って言うよね、普通のマニアは(普通のマニアを知らないけど)・・・」






ぶつぶつぶつぶつ。
僕と土方さんの怪訝の視線を浴びながら、彼女は縛られながらも顎に手を沿え独り言を呟く。
っていうか早すぎて何かお経みたいなんだけど。






「・・・ていうことはやっぱり本物?え?タイムスリップ?え、うそおん・・・」






また知らない言葉。
土方さんに、早く吐かせましょう、という意を込めて視線を送る。
それに同意したかのように、土方さんは彼女に声をかけた。






「おいおま「土方さん」






けど、途中で遮られちゃった(あ、また青筋)






「私は未来から来たみたいです、って言ったら信じます?」






心の奥底でその言葉に何故か納得した(だってそれなら殆ど辻褄が合うんだから)







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(11.01.14)