「・・・・・・・・・・」






ああ、天国のお母さん、お父さん。
あなた達の娘は今初対面の相手(しかも見ず知らず)に日本刀(しかも本物っぽい)を向けられてます。











自由に生きろ











「で?そのがここで何してるわけ?」

「・・・さ、さぁ・・?」






そう、と言って目を細め、刀を私に突き刺そうと構える目の前の男。
いやいやいや待て待て待て!!それは嫌だ!
すごい痛そう!!






「ち、ちょおおおおお!ホントなんですけど!寧ろ私が聞きたいんですけど!あんた、うちに侵入した強盗犯じゃないわけっ?」






私はストップの意味合いを込めて体の前に両手を広げた。






「本当、君何言ってるの?面白いなあ。殺しちゃうのが勿体無いよ」

「・・・・・・・」







・・・・思った。この人怖ぇ!無表情か悪魔の微笑みしかしねえよ。絶対勿体無いとか思ってないっしょ。めっちゃクスクス笑ってんじゃん、不気味な方の意味で。






「・・・!?」

「・・・?」






突然目の前の男は私を見たまま驚いた表情をした。
え?何?私の背後に幽霊でも見えた?大丈夫、その場合それは私の守護霊だ。
パトローナスだよ。






「・・・君、何?何で傷が治ったの?」

「・・あ、これに驚いてたのか」






私はさっき斬られた自分の左頬に触れた。
指に血はつくものの、傷口からはもう血は流れていない、傷口も解らない。痛みもない。
要するにさっきの今でもう完治したのだ。






「何か分からないけど遺伝なの。両親も祖父母も皆、傷がすぐに治る特異体質なのですよ」






小さい時はそれが普通だとか思ってたけど、そうではなかった。人前で軽い怪我をする度に何度『化け物』と言われたことか。ああ、今思い出しただけでも腹が立つわ。とくに山田!(←クラスの男子)あいつ不良に絡まれてるのを助けてやったのにクラス中に『は化け物だ』って言いふらしやがって・・・!まあ後で正義の鉄槌下して、皆にも上手く誤魔化したけど。
まあそんなこんなで『化け物』って言われるのは日常茶飯事だったんだけど、さすがに気分は良くないから、中学校くらいからあんまり人前で怪我とかしないようにしてたわけですよ。
だから人にこれを見られたのは久々。






「へー・・・君の家系面白いね。もしかして異人?その服・・・異国のものだよね?」

「・・・は?この制服は日本製ですが?(っていうか『へー』の時の目が怖かったんですけど・・・!)」






あ、嘘。注文するのは制服会社だけど、それを辿ると海外で大量生産してもらってるってことも考えられるな。いや、まあでもMADE IN CHINAとか書いてなかった気がするしきっと日本だ日本。

私の言葉に、目の前の男は眉根を少しだけ寄せた。





「日本で・・?じゃあ聞くけどどこで買ったの、その服」

「どこでって・・・普通に学校に入学する時に制服業者に頼んでですけど・・」

「がっこう?せいふく?何それ?」






・・・・・え?え?まさかこの人ニート学生か何か!?
『学校?制服?何ソレおいしいの?』ってこと!?
なんだよ!何で学校行かなくなっちゃったんだよ!その顔なら学校でもモッテモテのウッハウハだろうがよ。
まさかその顔で美少女ゲームオタクとか?ネト厨とか?
全然、大丈夫。
ドンと恋!!






「って、違ああああああう!!」

「煩い」

「ぎゃ!」






喉元に刀を突きつけられた。怖ええええええマジ怖えええええ。






「・・・・・で、その"がっこう"と"せいふく"って何?」

「・・・・え、それ本気で言ってたんですか?」

「早く答えなよ」






チャキッと刀が握りなおされ、私の喉元に冷たい感覚。ひえええええこの人マジだよおおおおお。






「がっこう、は、学生が行く場所。せいふく、は、私が着てるようものを、差しますね、はい。各学校を象徴する服、とでもいうべきでしょうか」






因みに私の学校はブレザーだ。セーラー服とかの子を見ると可愛くて羨ましかった。セーラー服、マジ憧れ。
って言っても制服がセーラー服に変わることはなくですね、私は三年間今来てるブレザー型を着てましたよ。






「"がくせい"は?」

「(えええええ学生もですがお兄さん。さすがにちょっと頭の方が本気で心配だぞ)えっと・・・勉強してて学校に通ってる人、のことですかね?っていうか、お兄さん大丈夫ですか。これ一般常識っていうか、幼稚園生の年長くらいだったら誰でも知ってますよ」






って言ったら目の前の男はおもっくそ顔歪めた。(いや、そんなことしても美人さんには変わりないがね。もうこれ犯罪級だよ。あ、この人犯罪者だったね、うんそうだったね






「・・・・なんかさ、君と話し通じない気がするんだよね」

「奇遇ですね。私もです。とりあえずここ何処ですか。うち両親死んだばっかなんで身代金出ませんよ。とっとと放してください」






しーんっ、と沈黙。刀を私の喉元に突きつけたままの男(しかも超イケメン)と私は数分見つめ合・・・げふんげふん・・・睨み合った。(数秒だったかもしれないけど、とりあえず沈黙が長いと感じた)






「ここは僕の部屋。僕が起きたら君が布団の横で寝てた」

「(・・・うわあ、マジか。犯罪者は私の方だったのか!)・・・・ってそんなわけあるか!私は夢遊病なんて持ち合わせていないし、そもそも夢遊病だったとしても歩きすぎだろ!」

「煩いってば。今ここで僕に話さないっていうんだったら土方さんに君のこと渡すけどいい?あの人の拷問はいっそ死んだ方がマシって思うくらい苦痛だと思うよ。蝋とか五寸釘使うんだ」

「え・・・・」






サーッとその拷問している場面を想像して、顔から血の気が引いた。蝋と五寸釘・・・怖えええええ!ってかグロ!






「何その人!マジ鬼!ギガント鬼!!」

「(ぎがんと?)新選組の鬼の副長なんだから当たり前でしょ」

「当たり前のわけあるか!そもそもそんな拷問の仕方今の日本に・・・て、え?何?しんせぐみ?






しんせんぐみってあの"新選組"?
何でここで新選組が出てくるの。
土方?さっき話しに出てきた土方って人が、何?新選組の鬼の副長だから蝋と釘で拷問するのはしょうがないって?ギガント鬼でもしょうがないって?いやいいわけないだろ。






「・・・え?え?え・・?」

「何、急に。もしかして、ここが新選組屯所だってことに気付かずに侵入しただなんて言わないよね」






言わないよね、って言われても最初からここ何処って聞いてたじゃんかよ!


ちょっと待って。整理しよう。できるだけマッハで。マッハ5くらいでいこう、そうしよう。
先ず、卒業式から帰ってきて玄関で眩暈発生。そこから記憶無い。目覚めたらここにいた(っていうか起こされた)。私の部屋じゃなかった(私のクラレどこ!)。見ず知らずの男(イケメン)に刀向けられた。斬られた。話し通じないくらい頭がイってしまっている。このままだと私は土方さんに差し出されて拷問の餌食らしい。土方さんはあの有名な新選組の鬼の副長。で、ここは新選組屯所だとか。






・・・・・・・・・・・・・・・・。






「・・・・・・・は?いやいやいや、ないだろ」






何だろう。このイケメンくんはもしかしなくても新選組マニア?一人でビデオ撮影とかしちゃってる人?ああ、だからこんな小道具も大道具も凝ってるのか。マニアだもんね、うん。






「あれ?でもだったら何で私は誘拐された?」

「ちょっと、さっき話したでしょ。君はここで寝てたの」






何だろう。本当に話しが噛み合わない。っていうか私は勿論のこと、この人も本気で話してるっぽい。あれ、じゃあ本気で学校も制服も解らなかったのか?え、結構な感じで精神イっちゃってる?






「精神病でマニアって何それ・・・初体験すぎだよ。つーか精神病なのにマニアっていうのが矛盾してるだろ」

「まにあ?さっきから君のその喋ってる意味の解らない言葉、やっぱり異国の言葉?」

「え、いや、まあ"マニア"は外来語の略語だけど、学校や制服は日本語ですよ。・・・お兄さん、本当大丈夫?今が何年だとかちゃんと分かる?今が平成何年か分かる?」

「平成?何それ。今は文久でしょ。君こそ本当に大丈夫?それとも、それは僕を油断させるための演技なわけ?」






・・・・・・・は?文久?ぶんきゅう?
文久って言えば、江戸の幕末ですよね。この間までバリバリの受験生だったんだからこれくらい覚えてますよ、ええ。






「・・・・・・お兄さん、生粋の新選組マニアなの?ちょっと、今はなりきらなくていいから真面目に答えてほしいんだけど」

「・・"まにあ"かどうかは知らないけど、僕は正真正銘の新選組だよ。もう君、土方さんに渡すしかないかな」

「えええええもうホント話し通じないいいいい!怒らないから!ビデオ撮影とかだったら協力するから!とりあえず話してみ!あれでしょ?マニア過ぎて新撰組になりきっちゃってるんでしょ?だから現代の言葉分からないふりしてんでしょ!?さしずめお兄さん美形だから沖田総司あたりを演じてるんでしょ!?だとしたら最高なナルシーだなお前は!」






でもそんなんでもかっこいいです!






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(11.01.14)