「ねねね、正ちゃん!美味しいお菓子買ってきたんだー。一緒に食べよ!」
「正一、モスカの設計図なんだけど・・・」
「むっ。また来たのねスパナ」
「・・・こそまた正一にちょっかい出しにきたのか」
「なにをー!?私は正ちゃんとお茶しに来ただけですー!スパナこそまた意味分からないロボの設計図!?」
「モスカだ。正一はと違って頭良いから配線の組み合わせを一緒に考えてくれる」
「はー!?それってまるで私が頭悪いみたいな言い方!」
「みたいじゃなくてそう言ってる」
バチバチバチッ
「(はぁ・・・)」
またこれだ。
目の前で火花を飛ばしあっている男女に僕は頭が痛くなった。
ことの始まりはが僕の隊に派遣されてきてからだったと思う。
僕と同じ日本人であったは何かと僕に話しかけてくる(一応これでも君の上司なんだけどな、)。
僕を見つける度に遠くの方にいても声をかけてきたり、駆け寄ってきたり。
時間が空いたら、こうして僕をお茶に誘いにきたり。
そこまではいいんだ、まだ。
問題はここから。
「だいったいね、毎回毎回図ったように私が正ちゃんといる時に来るの止めてくれる?」
「それはこっちの台詞。ウチが正一の所に来る度にいつもが来る」
金髪のつなぎ姿の男、スパナ。
ミルフィオーレに入る前からの僕の知人である彼も、よく僕を訪ねてくる。
恋愛感情とかではない(多分。いや、そう思いたい)。
ただ、彼も僕と同じ技術者だからなのか戦闘マシーンの設計図の向上などでよく僕に意見を求めてくる。
最近はその頻度が凄く増している。
「と・に・か・く!正ちゃんはこれから私とお茶するの!」
「正一はこれからウチとモスカの話し合い」
「ちーがーうー!」
ガシッ、とが僕の右腕を掴んできた(というか半分腕に抱きつかれた)。
あ、嫌な予感。
「正一を放して、」
ガシッ、と今度は左腕をスパナが掴む。
あ、本格的に嫌な予感。
「嫌!正ちゃんは私とお茶するの!」
「違う。ウチとモスカの話し合い」
両方向からグイグイと引っ張られる。
機械いじくってるだけだけど、スパナは男だ。力もある。
対するは完璧なる戦闘要員。並みの女の子よりは力はある訳で。
「いだだだだっ」
両腕を引っ張られた僕は何とも間抜けな声を出してしまった。
「正ちゃん!?」
「悪い、正一」
僕の声を聞いてか二人が同時に僕の腕を放した。
い、痛かった。毎度のことながらどうしてここまで僕が被害を受けなくちゃならないんだ。
「ちょっと、正ちゃん痛がっってるじゃん」
「のせいでしょ」
「違うもん。スパナが引っ張ったからじゃん」
「が放さなかったのが悪い」
「私、正ちゃん好きだもん。スパナこそ放せばよかったんだよ」
「ウチも正一好きだから嫌」
何これ。ナチュラルに告白されてる?
え、はともかくとして(毎回言われてる)・・・スパナにまで?
「うーわー!そういうことだったわけ?スパナ、正ちゃんをそういう目で見てたわけ?だからいつも私の邪魔してたんだ!」
「そういう目って何?ウチは正一のこと親友って思ってるけど。こそいつもウチの邪魔してきた」
あ、よかった。
スパナの『好き』は友情としての『好き』か。凄くほっとした。
さて、そろそろ止めないと周りからの視線が痛い。
口うるさいブラックスペルの連中に見られたらなんて言われるか。
「ストーップ!」
「正ちゃん・・・」
「正一・・・」
「君達、いい加減にしないと怒るよ?それに、同じ歳でも僕は君の上司だよ?正ちゃんはダメって・・・」
「・・・・だって、正ちゃんは正ちゃんだもん」
しょぼん、と項垂れながら意味分からないことを言う。
最初こそは女の子の扱いに慣れていなかったから戸惑ったけど、最近ではこれにはもう慣れた。
毎日毎日こんなことの繰り返しだ。
慣れないわけがない。
「ふっ・・・」
「あー!今鼻で笑ったでしょスパナ!」
「そんなことしてない。、眼科行ってきなよ」
「眼科ぁ!?私は両目とも視力5.0だっての!」
、それはないよ。
「スパナも。その件に関してはあとで研究室で話し合うことになってただろ?」
「・・・・・・」
こちらも心なしかしょぼん、と項垂れている気がする。
「(・・・・・何だろう)」
子犬を二匹飼ってるみたいなんだけど。
目の前に耳と尻尾をしゅん、と下げている子犬が二匹・・。
「とにかく、は部屋で待機。白蘭さんへの定時報告が終わり次第、スパナとそっちに行くから」
「え!?何でスパナ!?」
「そうだ正一。どうしてもウチも?」
お互いがお互いの言葉に気分を害したのか、両者また睨み合い始めた。
まったく。本当に何回こういうことを繰り返したか分かったもんじゃない。
「そうすれば、ともお菓子食べれるし、スパナとも話し合いができる。二人の望みは叶えられるでしょ」
「・・・う"ー・・・そうだけどー・・・」
「・・・・何か違う」
複雑そうな顔をする子犬二匹に心を鬼にしてピシャリと言い放った。
「とにかく。それで二人の願いは叶うんだからつべこべ言うな。それ以上言うと、本当に怒るよ」
毎回のこのやり取りにいささか苛立ちを覚えていたのは確かだったので(まあ、二人が僕に好意を持ってくれるのは嬉しいけど)、少しドスの聞いた声で睨みつけると、二人ともビクッと震えて動かなくなった。
「じゃあ、僕は行くからね。僕が行くまで二人とも自室で待機」
そう言って、僕はその場を後にした。
その後あの二人を見かけた部下から聞いた話し、「正ちゃんは私のなんだから!」「正一はウチの」と言い合っている二人がいたとか。
好き好き大好き
スパナと正一を取り合おう。
正ちゃんがかわいすぎて書いたお話し。
技術畑大好きだ。
11.03.30