世界が幸福に包まれる日。それは、私も貴方も幸福に包まれる日。










Merry Christmas










12月25日。真っ黒な暗闇の空から真っ白な雪が降っている、この時間。ゴドリック谷にある、ある一家の家では賑やかなパーティーが始まろうとしていた。






「いやー、ハリーは本当に可愛いなー」

「ちょっとシリウス!君いつまでハリーを抱いてるんだい?いい加減僕にも抱かせてくれないかな」

「お前は何時も抱いてるだろジェームズ」






小さな赤ちゃんを挟みながら言い争いをする大人二人。結構間抜けな光景だって気付かないのかな?

ポッター家に集まってから早数十分。メンバーは集まった。けど集まるのが早かったからなのか、まだメインの料理が出来てないとの事。その料理を今台所でリリーが作っている最中。何か手伝おうかと聞いても『お客様だもの。ゆっくりソファにでも座ってて』と言われ、台所から出てきて早数分。

大人しくソファに座り、リーマス、ピーターと目の前のジェームズとシリウスを見ればハリー争奪戦を始めていた。






「シリウスもジェームズもどっちも親馬鹿だねー」

「と、止めなくていいのかな?」






私の隣でリーマスがクスクスと笑いながら二人を眺めている。その隣ではピーターがオロオロと二人を止めるべきかリーマスに聞いてる。よく見ればハリーは二人の言い争いを聞いて気分を害したのか、今にもぐずり泣き出しそうな表情をしていた。


…………気付こうよ、大人二人。






「だいたい、ハリーの父親は僕だよ!?」

「俺だって第二の父親だ!」






気 付 こ う よ 。

あ。本格的にぐずり始めちゃったよ。あっ。あーあ、泣いちゃった。どうするのよ、二人とも。






「ぅわ!ちょ、ハリー!泣き止めって!」






シリウスがハリーを高い高いするけどハリーの泣き声は増すばかり。シリウス、貴方第二の父親なんでしょ。それくらいで動揺してどうするのよ。






「ダメだなー、シリウス。こうやるんだよ」






そう言って今度はジェームズがハリーの目の前で『ベロベロバー』と……変顔を、した。勿論逆効果。






「おいっ、ジェームズ泣き止むどころか益々泣き出してんじゃねーか!」

「おかしいなー、いつもは泣き止んでくれるんだけど…」






そんな会話をしてる間にもハリーは泣き止む傾向を見せない。まったく。リリーのジェームズへの苦労が解る気がする。






「全く、二人ともハリーの父親でしょ」

の言う通りだよ。ジェームズ、シリウス。二人とも父親失格だね






リーマスの言葉の後に二人の頭の上にゴーンッと大きな石が落ちたのが見えた、気がした。






「シリウス。変わって」






ソファを立ち上がり、シリウスからハリーを受け取る。ジェームズと同じ色の髪。けど、瞳はリリー。間違いなく、二人の子供だって解る容姿。






「よしよしハリー。恐くないよ」






トントンと背中を叩きながらあやしてあげると、段々と笑顔になっていくハリー。リリー似の深緑色の瞳からはもう涙は出てない。






「「おおー」」






その光景を見ていたダメ親父の二人は揃って感嘆の声を漏らして拍手。それに私もリーマスも、ピーターでさえも呆れる。






「まったく、このダメ親父二人は」






リーマスのその言葉がシリウス達の胸に突き刺さったみたい。二人もしゃがみ込んで二人してへこんでる。背後に暗いオーラを背負って。本当に、良い歳した大人二人が何やってるんだか。






「な、何かってそうしてると母親みたいだね」

「そうだね。達の子供ができた日が楽しみだよ」

「な、なななな何言ってるのよ、リーマス!」






本当に何言ってるのよリーマス!しかも"達"って。"達"って私と誰の事を指してるのよ。

『あはははー』と笑いながらリーマスはもう暗いオーラを背負っていないシリウスの方を見た。丁度こっちを見ていたシリウスがリーマスの顔を見て、怯んだ。







「(何時になったら腹を括るんだい、
このヘタレ犬。早くしないと、呪うよ?)」

「(Σ(゜Д゜;) の、呪う!?)」

「(冗談だよ)」

「(…………冗談に聞こえない…)」






何、この二人。アイコンタクトでもとってるの?私的にリーマスの笑顔がちょっと恐い。






「ジェームズ」

「リリー!」






救世主、とでも言えばいいのか。台所の方からリリーが顔を出した。ジェームズは素早く反応してリリーのもとへ。






「料理を運ぶの手伝ってくれない?一人じゃ多すぎて…」

「お安い御用さ!」

「じゃ、僕達も手伝うよ。ね、ピーター」

「うん」

「あ、じゃあ私も…」

「そんなに大勢で行かなくても大丈夫だよ。はここでシリウスと一緒に待っててくれるかい?」






リリーの所から一旦戻ってきたジェームズが私の腕からハリーを受け取りベビーベッドの中へと戻す。そしてシリウスの所へと向う。






「この隙に、そのポケットに入ってるる指輪をに渡せよ?」

「なっ、どうしてそれを!?」

「君の思ってる事なんて手に取るように解るよ。何年の付き合いだと思ってるんだい?」

「…………」

「大丈夫。上手くいくさ」






何を言っているのかは聞こえない。と、ジェームズがシリウスの肩をポンッと叩いて立ち上がった。






「じゃ、。シリウスの事よろしくね」

「え?あ、うん…?」






そう言ってジェームズは先に台所へと行った三人の後に続いた。言われた事の意味がよく解らない。ジェームズからシリウスに視線を移せば、彼はこっちを見ていた。何かを決意した時に見せる眼差しで。

自分の鼓動が早くなるのを感じる。一体彼は何を決意したのか。

今までしゃがみ込んでいたシリウスは立ち上がり、こっちに向って歩いてきた。






「…






本当に、自分の恋人は何を決意したのか。眼差しも声も、何時もと違う気がして。何時もより彼が格好良く見える気がして。本当に、何なんだろう。






「…渡したいものが、あるんだ」






そう言って渡されたのは、小さな四角い箱。






その箱の中には小さいけれど、綺麗な宝石が埋め込まれた指輪。それが何を意味するのか。解らなくはなかった。指輪を渡された後に彼に言われた言葉。それに私が歓喜の涙を流さない筈がなかった。

















聖なる夜。貴方から貰った物と言の葉。どちらも私の大切な宝物となる。





私は今、凄く幸せ。








今日は、全ての人が、





この地球上に生を持って産まれてきたものが







全てが幸せになってほしいと願いたくなる夜。









貴方に。そして、地球上の生きとし生けるもの全てのものに










――
Happy Merry Christmas.