図書室の一番奥の一番端の机。図書室の何処にも(禁書棚以外)いなかった奴が居た。けどあいつは、あろうことか俺達が毛嫌いする野郎と一緒にいた。
「てめっ、スニベルス!に何してやがんだ!」
とスネイプは向かい合わせに座り、少し頭を付き合わせる様な形で話をしている様に見えた。何で二人が一緒に居るんだ。まさかあの野郎、に闇の魔術の云々なんかを聞かせてるんじゃ。
「まあまあ、落ち着きなよシリウス」
今にも飛び掛っていきそうな俺をジェームズが腕を掴んで制した。
「で、スニベルス。如何して君がと一緒にいるわけ?」
「こいつが勝手に座ってきただけだ。僕は関係ない」
こいつ、よくもぬけぬけと。
読んでいたであろう分厚い本(多分闇の魔術関係)を閉じて、椅子から立ち上がったスネイプの胸倉を掴んで更に強く睨みつける。
「てめえ、よくそんな嘘を…」
「ちょ、シリウス!」
険悪なムードの俺達の間にの声が入り込む。はスネイプを掴んでいる俺の手を押さえながら制止の声をかけてきた。何でこいつの肩なんか持つんだよ。
「セブルスが言ってる事は本当だってば」
「!こいつは闇の魔術大好き人間なんだぞ!何されるか解ったもんじゃねえ!」
「あー、はいはい。解った解った。解ったからとりあえず別の場所に移動しよ」
って、おい!適当に流してる感バリバリじゃねえか!!
「待って。僕達はまだスニベルスに用事が…」
「その用事ってまたいつもの悪戯(という名の虐め)でしょ?図書室ではお静かに。よってセブルスに悪戯は禁止」
そう言いながらは俺達の背中をぐいぐい押してこの場から離れようとしている。確かにこんな所で悪戯しようものならマダム・ピンスが鬼の形相でやってくるに違いない。
くっそー!なんだってはスネイプなんか庇おうとしてんだ!
決めた。今度の悪戯のターゲット変更だ。フィルチじゃねえ。ターゲットはスネイプだ。今日の分までたっぷりお見舞いしてやる。
「じゃあ、さっきの答えは今度会った時にね」
俺達の背中を押していて全身振り返れないのか、はスネイプの方に首だけ振り返ってそう言った。さっきの答え、って何だ?あいつはあいつで気にした風もなくまた椅子に座り直して本を読み始めてるし。一体こいつ等何の話をしてたんだ。
Snow White
王子様に嫌われた小人
俺達はに背を押されるままに、図書室の入口付近まで戻ってきていた。のやつ、あの一番奥の机から一番遠い所まで連れてきたな。
「!どうゆう事だよ!」
「シリウス煩いー」
は手で耳を押さえるフリをした。
「"さっきの答え"って一体何だよ!」
「秘密。別に大した事ないよ」
いいや、大した事だ。あいつと話してただけでも問題なんだ。あんな危険で陰気な奴とが話してた事だけでも大問題だ。
「、話の内容はともかくとして、前にも言った通りあいつにはあまり近づいてほしくないんだけど…」
「二人とも。今日は悪戯に使う魔法を覚えに来たんでしょ?だったら早くやらない?」
「その前に、何であいつなんかと一緒にいたんだよっ」
「それは…あーっ、もう!説明するのめんどくさい。この話はまた今度ね今度」
めんどくさい、っておい!説明するのも面倒くさいくらいに深い内容なのか!?
「それから、ジェームズ。セブルスは二人が思ってる程悪い人じゃないよ?」
「はあいつの事良く知らないからそう思うんだよ」
「だったらジェームズ。貴方はセブルスの何を知ってるって言うの」
その言葉にジェームズが言葉に詰まった。確かに俺達はスネイプの事なんて詳しく知らねえ。知ろうとも思わねえ。けどあいつは敵寮の奴で、しかも危険な闇の魔術を扱おうとしていて、マグル生まれを"穢れた血"とか言って呼ぶ奴で。おまけに陰気で根暗。
そう言ったらは思いっきり溜息を吐いた。
「(ツッコミどころが満載で何処から言っていいやら…)あのねー、敵寮ってのは別に私は全く気にしてないし、陰気で根暗とかいうのも気にしないわよ。しかも別にそれは個人の見方であって、他人に強制してその印象を与えられはしないと思うし。それに闇の魔術なら私だって多少は(っていうか大分だけど)扱える」
闇の魔術を扱える?が?
「"穢れた血"っていう呼び方も別にセブルスの所為じゃないんじゃない?家系がそういう家系なら、普通はその家系に合ったような育て方をされて、それに見合った様に育ってくる。セブルスが純血主義の家系に生まれたんならそれはしょうがないと思う。まあ、シリウスの場合は特別なんだろうけどね」
「…え、っと…ちょ、ちょっと待って。闇の魔術が、使えるの?」
「多少ね、多少」
多少、ってそれでも使えるのか。こいつ、本当に何でも出来るんだな。まだ入学して半年も経ってねえってのに、こいつは殆どの魔法が出来るんじゃなねえか。もしかしたら無言呪文なんていうのも出来るんじゃ。
「私を嫌う?セブルスの様に。私だってセブルスと同じ闇の魔術を扱うわよ」
「でもはそれを故意に相手に使おうとは思ってないだろう?」
「まあ、あんまり使いたくはないけど…」
「だったらはあいつと同じなんかじゃない。あいつは闇の魔術を習得して、それを使える限り他人に使おうって考えてる奴なんだ」
「仮にそうだったとしても、私には彼の上をいく自信があるから、呪いを掛けられても返り討ちにできると思う」
だからご心配無用、とにっこりと言葉を続けた。あいつの上をいくって、まあ確かにならその言葉も解るけど、そんなに呪いとかを熟知してるのか?
でも俺はが闇の魔術を熟知していようと不思議と危険は感じない。スネイプの様に嫌いになろうとは毛頭思わない。それは入学したその日から、否、出会った日から俺がと関わってきたからなのか?
「(いやいや、待て待て俺。その原理でいくと俺とスニベルスもちゃんと関われば嫌いになんかにはならないって事になるぞ)」
それだけは絶対に有り得ない。あいつと仲良くなるところなんて想像するだけでも反吐が出る。スネイプはスネイプ。はだ。だから俺は気にしないんだ。だからあいつが闇の魔術を熟知していようと気にしない。
ちらり、とジェームズを見れば小さく溜息を吐いていた。
「そこまで言うならもう何も言わないよ。それにの友人関係に僕達が口出しする権利なんてないしね。でも、例えが返り討ちにできても、あいつがに呪いなんかを放ったりしたら直にでもあいつと引き離すからね」
「はーい(って、これじゃ娘とお父さんの会話じゃない)」
「シリウスもそれでいいかい?」
二人の視線が俺に移る。まあ、本人にあれだけ言われればYes,としか答えようがない。
「…わーったよ。でもその代わり、出来るだけあいつと会うのは止めろよ」
「はーい(何だろ、この両親に恋人との恋愛を認められたような疲労感…)」
もう何も言うまい、とが胸中で呟いた事を俺達は知らない。
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08.08.010 修正完了